紅き蝶 白き魂2

□42話
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「美朱!鬼宿!これは一体なんなんや!?」

「イヤな気配がしましたが……」


風がやみ穏やかな青空が広がった雪山に自分たち以外の声が通る。

翼宿の叫びに振り向くと仲間たちが息を切らせ慌ただしく駆けこんできたところだった。


「み、みんなぁ……っ」


朱金の光を背に険しい顔の鬼宿と彼に抱き締められている半泣きの美朱をみて、仲間たちはそれぞれ怪訝な顔をした。


「二人とも後ろの光は一体……?」

「あれは―――……っ!」


軫宿の呟きに井宿も驚きの声を上げる。

朱金の光は雪に反射され太陽の光との相乗効果でまばゆく輝き、目を開けているのも辛いほどだ。


「ち、井宿。柳宿と浅葱があの光の中にいるの!
でもずっとあのまんまで……何がどうなってるのか分からなくて…っ」

「ちょ…っ!この中に浅葱がいるんか!?待ってろ!今助けに――――おわっ!?」


美朱の言葉に翼宿が過剰に反応し光に飛び込んで行く。しかし光は彼を弾き返した。

まるで光の中にある“なにか”を護るように。


「そんな…。だってあたしがさっき触れたけど大丈夫だったのに」


美朱の呟きに井宿は仮面を外し片眉を僅かに動かした。

翼宿が触れられず美朱は触れられた。その意味は―――。

己の予想を確かめるように井宿も光に腕を伸ばすが、電流が走り抜けるような鋭い感覚に無言で引っ込める。


「一体なんやねん!?」

「……おそらくこれは朱雀の加護の光なのだ」

「朱雀の加護、ですか?」


張宿の問いに頷き井宿は厳しい眼差しで光を見据える。


「朱雀が二人を護るために発動したのか、それとも彼女が……浅葱が無意識に朱雀の力を発動させたのかはオイラには分からないのだ。
でも巫女だけが触れられるならば、この光は朱雀の力で出来ていることは確かなのだ」


そんなことが可能なのだろうか。

互いに顔を見合わせ井宿の言葉に眉を寄せる。


「柳宿は朱雀七星士、浅葱は巫女のために存在する『形代』。
直接朱雀の力が使えないとしても、可能性は大いにあるのだ」

「ちょ、ちょいまて!『形代』って!そんなもんやったんか!?」

「なのだ。特殊な存在のために詳細は口伝で伝えられているのだ」

「……ではなぜ井宿は知っている?」

「……太極山で修行していた時、太一君から聞いていたのだ。
巫女を護るために存在する『人形』がいると」


軫宿の真剣な眼差しに井宿は苦しげに話すと、美朱に視線を投げる。

美朱は井宿の目に泣きだしそうなり、鬼宿の袖をぎゅっと握った。


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