邂逅と安らぎの檻にて

□第5話
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秋風は重いため息を吐き出すと、力なく原田と藤堂に頭を下げた。


「毎回毎回ウチのバカ兄がすまない。
何度言っても来やがるんだが……今日は五体不満足にして帰してやる。次からは来れないはずだ」


ふふふ……と不気味に笑う秋風に二人はビクリと肩を震わせ、藤堂は一歩後退してしまった。

怖い…怖すぎる。

やや長い前髪が顔を隠し、くつくつと喉が鳴る姿は夜でもないと言うのに不気味すぎた。


「い、いや不満足とかはちっとやりすぎだろ。
でもまぁ…土方さんが居ねえ時に来てるってのは不味いよなぁ…」


ただ口で言って帰しても、また明日来てしまうのは不味い。

さらに不味いのは、副長と総長が大坂に出向き不在の間に来ていることだ。

これが知られたら、彼らの命どころか自分達にもとばっちりが飛んでくる。

今回は食べ物抜きか金子減額か、はたまた島原出入り禁止か。

考えただけで身震いがする。


「今んところ俺たちだけ知ってるってのが救いだな…」


監察方の方はどうだか知らないが、土方から何かを指示する文は届いていないことから耳にしていないか何とかなると放置しているのだろう。


「……そんなに、頭を抱えることはあるまい。
…向こうにいても暇だ。同じ暇なら…刺激があるこちらの方が楽しめるだろう」

「知兄、どうして私の努力を無駄にする発言を…」


知盛はユラリと身体を起こし意味あり気に目を細めた。

それに対し秋風は最早何の気力もなく額を押さえ、どうにでもなれ!と半ばやけくそになっていた。


「さ、左之さん…どうすればいいんだよ〜」

「………とりあえず近藤さんが帰ってきたらだな。
確か贔屓の商家に行っていたはずだったな?」

「あ!そう!そう言えば、そう言ってたっけ。
んじゃ、もう少しすれば帰って来んな!」


近藤さんに許しを貰えば、土方さんも反論できねぇしな!と言うと、藤堂は胸を撫で下ろす。

それとは正反対に原田は思案顔でふてぶてしい知盛と、諦めてどこか遠くをみつめている秋風を交互に眺め小さく息を吐き出した。



……そうなれば、いいが。


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