紅き蝶 白き魂2
□39話
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「わぁ〜見て見て浅葱!吹雪いて来たよ!」
「よかったわ。宿が取れなかったらこの吹雪の中過ごさなきゃならなかったんだもの」
宿の小窓から外を覗いていた美朱と浅葱は轟々と降る雪を見てそれぞれ違う感想を述べた。
あの後、宿を探し四人部屋が一室だけ空いている宿に泊まる事にし、柳宿の手当てをして四人はそれぞれ談笑していた。
柳宿は「寒いんだから閉めなさい」と双子を注意し、無邪気にはしゃぐ美朱と冷静に答える浅葱を見ていた鬼宿は苦笑いし「そーいえば…」と柳宿に話を振った。
「青龍七星士の一人に襲われたって、よく無事だったな!」
「あら。あたしだって朱雀七星士だもの!」
「確かに柳宿が助けてくれたけど、照明弾を使うのを思いついたのは浅葱だよ!」
さすがあたしのお姉ちゃん!と嬉しそうに言う美朱に鬼宿は「さすがだな」と軽く返す。
しかしそれも何か言いたげな表情になり、それとともに口籠ってしまった。
合流してからしばしば見せる不可解な間に美朱は調子を崩され、口をへの字に曲げると思いきって鬼宿に声をかけた。
「なーに!鬼宿さっきから…」
「お前よっ」
鬼宿と美朱の声が重なる。美朱はキョトンと眼を丸くさせ鬼宿の言葉を待った。
けれど彼は「どうやってこっちの世界に…」と言いかけ、それも徐々に言い淀みやがて言葉を打ち切ってしまった。
「……なんでもねぇ。ちょっと酒でも飲んでくる」
「鬼宿……?」
美朱の戸惑う声に振り向くことなく彼は部屋を後にした。
2人のやり取りを黙って見ていたを浅葱と柳宿はお互い顔を見合わせ、目だけで合図を送った。
それを機に柳宿は鬼宿の様子を見てくるために部屋を出て行き、浅葱は部屋に留まった。
美朱は釈然としないのか困惑した表情だった。
「美朱、そんな顔しないの」
「でもさっきから鬼宿おかしいんだよ?気になるじゃん。はっ!も、もしたら連れてかれた所で男たちに…っ!?」
「ないない」
確かに石碑の話を聞きに行ってから鬼宿の様子がおかしくなったが、いくらなんでもそんな事にはならないだろう。
美朱のおつむを少しだけ心配してしまう。一体どんな想像をしているのだろう。
浅葱が疲れたように溜息をしている傍で、美朱は落ち着きなくそわそわしだした。
「やっぱり気になる」
「柳宿がそれとなく聞き出してくれるんじゃない?」
「それもそうだけど話してくれないかもしれないし…ということでちょっと下に行ってきまーす!」
「ちょっと美朱…っ」
浅葱の制止の声など聴こえていないのか、美朱も部屋を出て行ってしまった。
一人残された浅葱は閉まってしまった扉を見つめ、深々と溜息を落とすと美朱を追いかけるために自分も部屋を後にした。
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