紅き蝶 白き魂2

□38話
1ページ/9ページ




早朝から馬を走らせ六時間かけ目的地の『特鳥蘭』についた。

特鳥蘭は北甲国の首都だけあり、堅牢な城門に護られた都市だ。

煉瓦作りの街並みは紅南国よりも頑丈に造られているのか、見る者を圧倒する迫力があった。

さらに、ちらちらと降る雪と肌を突き刺すような冷気が北国だと実感させる。

気候が安定している紅南国との違いに七星士たちが驚く中、浅葱は厚い雲に覆われた空を見上げ降ってくる雪を懐かしげに見つめていた。










※  ※







驚くのもそこそこに、浅葱たちは休息と食事とを兼ねて入り口近くの食事処に入った。

昼を多少過ぎた時刻だからか、かなり賑わっている。喧騒に混じり料理のイイ匂いやアルコールの香りが漂う。

浅葱達はその中の一角に陣取った。

注文した酒や料理が並ぶ。各々温かい食事に舌鼓しつつ井宿の前に広げられた北甲国の地図を前にこれからのことを相談する。

斗族のから貰った地図だ。馬や衣服のほかに貰ったのだが、かなり助かった。

これがなければこの広大な国を一から把握していかなければならなかったのだ。

北甲国の国土は紅南国の三倍もある。目星もなく闇雲に探すのは命取りと、手分けして情報を集めることになった。

子供の張宿は井宿と、落ち着きのない翼宿は軫宿と、そして鬼宿は当然のことながら美朱と行動する事に決まった。

残るは浅葱と柳宿の2人だ。

浅葱は温かなお茶に和んでいたが、皆の視線にキョトンとすると小首を傾げながら自分の意見を口にした。


「私は柳宿と一緒に行きます。柳宿はどうしますか?」

「ん〜…そうねぇ、美朱たちと一緒がいいわ。
美朱も浅葱もお互いがいれば無茶な事はしないでしょうし、星宿様のかわりにあんたらを護らなくちゃいけないからね」


柳宿はそう言いにっこりと笑うと、美朱は拗ねたように唇と尖らせ浅葱は目を細め苦笑した。

対照的な反応に仲間たちは笑いながら、誰がどこを探るか決めるために本題に戻る。

その時、後ろで飲んでいたらしい小太りの男が酒を片手に浅葱に声をかけてきた。


「おーおーねえちゃん!小奇麗な顔してんじゃねぇか。どうだ?俺の酒の相手してくれねーか?」

「……申し訳ありませんが、仲間と大事な話しをしてますので他のどなたかに頼んでください」

「ちっ、なんだ小奇麗なツラして愛想がねーな。ならこっちの姉ちゃんはどうだ?
おっ、よく見りゃべっぴんじゃねーかぁ!」


顔を赤らめニタニタと笑う男に柳宿は片眉を跳ね上げ、手加減なしで男の脳天に拳を叩きつけた。

盛大な音をたて男は床に沈む。それを一瞥し柳宿は浅葱に振り向いた。


.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ