紅き蝶 白き魂2
□36話
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煌びやかな内装。綺麗な女性。おいしい食事。
しかしその中に男は一人もいない。
「歪な国…」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いえ。このお料理とてもおいしいです」
「それはようございました。ここはお酒も名産ですのよ。どうぞ」
「……いただきます」
キレイな女官に勧められ浅葱は注がれたお酒に口をつける。
甘い香りにすんなりと喉を通る。現代のカクテルに似ている気がする。
しかし生まれて15年。お酒など口にする機会も少なく…いやないに等しく直ぐに意識がふわふわしてきた。
ただ顔に出ない性質らしく、見た目はいつもの浅葱だ。
「あのー。さっき連れてった男の人はどこにいるんですか?」
「ああ地下牢につないでありますよ」
遠慮なく出された食事を食べていた美朱が、あの隊長に声をかける。
隊長と思われていた女性は、実はこの女誠国の女王の娘だった。王族の娘ゆえに部隊を指揮していたらしい。
朱雀の巫女と七星士だと答えた時、同じく彼女たちも自己紹介をしていたが勇ましい女性だ。
彼女は美朱の問いに軽く答えると、そんな話題など興味がないのか物珍しげに美朱を観察しながら別の話をふった。
「それにしても北甲国への正規の道筋から随分はなれましたね」
「やっぱりそうなんですか」
「ええ。ですがここからの方が実際近道なんですよ」
「近道あるんですかぁ!?」
ここからどう行けばいいのか戸惑っていた美朱達には思いがけない情報だ。
美朱は思わず声が弾んでしまった。
「一つだけですが、西の城壁の下に北甲国に繋がる浅瀬があるんです。
ですが外部からの侵入を阻止するため立ち入れなくしてあります」
「それはどこに…っ。通してもらえることってできませんか!?」
「ムリです。下は崖ですから下りられませんよ」
女性は美朱の言葉をさらりと流し、奥から来た女官を目にとめるとにっこりと微笑んだ。
「ああ、お部屋の用意が整ったようです。彼女らが案内いたしますので、ゆるりとお休みください」
※ ※
「―――――――っていってた。どうする?」
「もち利用するっきゃないでしょ」
案内の女官たちに聞こえないよう小声で、美朱はさきほど聞いた情報を仲間たちに話した。
それぞれこの話にのるらしく、反対意見はでない。
これからの事で困っていた自分達にとって有り難い情報だった。
「大丈夫、軫宿はオイラにまかせとくのだ。今夜はみんな疲れてるしゆっくり休むといいのだ」
こそりと井宿が軫宿の救出を申し出、それぞれ心得たように頷いた。
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