紅き蝶 白き魂2

□51話
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「…………」

「あら、珍しい料理もあるわね。浅葱?なに固まってンの」


案内された食堂にはテーブルに所狭しと料理が並べられてあった。

見慣れたものから見慣れぬ怪しい物体xまで。

コゲなのか、調味料でこうなったのか、黒い塊が乗った皿を凝視していると、美朱とこの屋敷の奥さんが残りの料理を運んできた。

奥さんが運んできているスープは美味しそうな匂いと共に、綺麗な色をしている。

対して美朱が運んできた料理は、どう表現したらいいのか困る色と匂いだ。

近いのは漢方薬のような薬臭。その中に焦げたような香りがまざりカオス化している。


「美朱……ちょっといいかしら」

「え、えーと……。あとでダメ?」

「ええ、そうね。犠牲者が出てからじゃ遅いと思うの」

「犠牲者って、ヒドイ!!」

「ひどいのはどっち!自分の家庭科の授業の成績、思い出しなさい!!」

「そ、それは……。でも、今回は見た目はおかしいけど、味は大丈夫のはずなんだよ!」

「はずってなに!?毎回言うけど、味見はしたんでしょうね」

「……えへ」

「このバカ!」


笑いで誤魔化す美朱に、浅葱は額を押え呻く。チラッと見えるテーブルには、その味見をしていない物体xが点在している。

これを片づける時間など今更あるはずもなく、そっと心の中で仲間たちに謝った。


「二人ともなに騒いでんの。ほら、さっさと座りなさいよ」


ちゃっかり着席している柳宿に頬を引きつらせ、一度美朱の手にある物体に視線を落とす。

とりあえず、わが身がかわいいので手を付けないようにしよう。それから時間があるときにでも彼女に料理を教えよう。


(母さんが忙しいからって、私一人で家事を切り盛りしてたのがいけなかったのよね。
少しでも手伝わせるべきだったんだわ……)


いまさら後悔しても遅い。そっと目じりを拭い――涙は出てないが、いままさに出てきそうだ。過保護だったのかもと後悔も含まれている――柳宿の隣に座る。

美朱は唇を尖らせつつ、運び込まれた料理に同じく涙を滲ませる。こちらは自分の料理とその他との差に泣いていた。


「柳宿、美朱の料理に手を付けないほうがいいですよ」

「あんたたちの国の料理でしょ?ちょっと興味あるんだけど」

「……見てれば分かります」


目を反らし諦観な顔で肩を落とす浅葱に、柳宿は不思議そうに首を傾げた。




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