紅き蝶 白き魂2
□43話
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「え?あ、あの…?」
「どの時代も形代となる者はみな純粋な者ばかりのようですね。
我らの知る子は純真無垢で巫女の為ならば自らを犠牲にするような子でした。
あなたもあの子に負けず劣らずのようで」
斗宿は懐かしむように目元細めどこか遠くを見ている。隣の虚宿は少し悲しげに俯いた。
それぞれ反応は異なるが、二人にとって玄武の形代は大事な仲間だったことは確かのようだ。
微かに残る記憶を呼び起こし「よかったわね」と自分の中にいるだろう玄武の形代に語りかける。
ほんわりと胸が温かくなった。きっとあの子が喜んでくれているんだろう。
「あの子って…玄武の形代だった人の事かしら」
聞こうにも聞きだせる雰囲気ではないと柳宿は戸惑いつつ口の中で小さく呟いた。
どこか遠くを見つめているような眼差しは過去の情景を思い出しているように思えた。
「え?合格ってホント!?」
「はい。形代の助力があったとはいえ、その彼女の力を引きだしたのは紛れもなくあなただ。
あなたの力は見させていただきました。朱雀の巫女。
皆さんにも失礼なことをいたしました」
「それじゃ、ここ通してくれるの!?」
「……はい。我々が神座宝の所まで案内します」
鬼宿に怒りの張り手をかまし、自分のコートを羽織った美朱が驚き顔を輝かせる。
斗宿は軽く頷き、相棒たる虚宿に視線を投げた。
「しょうがねぇな……」
渋々といった声音に反し、その顔はどこか寂しそうに見える。
しかるべき時にしかるべき人物の元に渡るようずっと守ってきた。
その使命感からの解放と一抹の哀愁が彼をそんな表情にさせていた。
浅葱は自身には覚えのない記憶――――玄武の形代の記憶から、少女の太陽の様な笑顔がうっすら浮かびそっと瞼を下した。
(あなたの七星士はあなたとの約束をずっと守ってきました。巫女冥利に尽きますね、玄武の巫女……)
記憶の中の少女はその花の様な風貌を綻ばせ、やがて消えていった。
美朱が制服を着るのを待って朱雀一行は玄武の二人の後について行き、洞窟の最奥で歩みをとめた。
目の前には重厚な扉。その扉は斗宿と虚宿、二人の力で強固に封じられているのだと彼らは語った。
その扉を二人が開け放つ。
見えてきたのは洞窟内だとは決して思えない、宮殿の様な作りの回廊。
紗が幾重にも重なったカーテンが奥に見える。そこまでの道は大理石の様な白乳色の柱と
塵一つない絨毯。
紅南国の宮殿とは様式がことなるが、どこか豪華で神聖な雰囲気は似ていた。
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