紅き蝶 白き魂2

□43話
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朱と金が混じる目映い光がゆるゆると縮みやがて消え去ると、現れたのは満身創痍で横たわる柳宿とそれに折り重なるように倒れている浅葱の姿だった。

柳宿の衣服は原形をとどめず胸元は無残にも切りさかれ血を垂れ流し、色白の顔をさらに白くさせ生きているのか不思議なほど。

対して浅葱は左肩を赤く染めている以外は特に目立った外傷はなかった。


「ぬ…柳宿…?浅葱…?」

「う…っ」


美朱が戸惑いつつも声をかけると僅かに浅葱が呻き声をあげた。

それに弾かれるように皆が慌てて駆け寄る。


「浅葱!!柳宿……っ!!生きてるか!?」

「軫宿!!ふ、二人が…っ!!」


鬼宿が柳宿から浅葱を退けさせ、近場にいた翼宿に彼女を預けると青白い顔の柳宿の頬を叩く。

美朱はぐしゃぐしゃに顔を歪め涙を流しながら軫宿に叫んだ。

軫宿は顔を険しくさせながらざっと目を通し、柳宿の胸が僅かに上下に動いていることを確認すると懐から小瓶を取り出した。


「軫宿さん、それは?」

「……太一君から授かった聖水だ」


張宿の問いに言葉少なめに答えた彼はそれを数滴彼に振りかける。

キラキラと光る粒が柳宿に降り注ぐ。

驚く事にそれは彼の傷だけではなく服まで再生させ、何事もなかったように元の姿へと戻してしまった。


「すごい…」

「どうやらその聖水は軫宿の負担を軽減させるだけでなく、治癒効果もあるようなのだ」


驚きと共にその効力に目を瞬かせているとピクリと柳宿の瞼が動いた。

震える瞼がゆるゆると持ちあがり光を宿した瞳が現れる。


「……あら……やだ。みんなして…なんて顔してんのよ…」

「柳宿さん…よかった…っ」

「柳宿、具合とか大丈夫なのだ?」

「そうだぜ。なんせ虫の息って感じだったしな」

「た、鬼宿さん……っ!それは柳宿さんに失礼ですよ!」


耳に慣れた声が仲間たちの鼓膜を震わせる。

瞬間、彼らは柳宿が生きているのだと実感し安堵と共に思い思いに彼に声をかけた。

それに「心配かけちゃったわね」と自嘲を含んだ笑みを浮かべ、柳宿は「大丈夫よ」と返した。


「ぬ、柳宿――……っ!!!」


顔色は悪いが小さく笑んだ柳宿を目にした瞬間、美朱の目尻から涙が一滴流れ落ちる。

そしてそのまま彼に抱きついた。


「ちょっと美朱ぁ、いきなり抱きつかないで」

「心配したんだからこれくらいいいでしょ!」

「いいわけあるか!って、こんなことしてる場合じゃないわ。
浅葱も怪我しんのよ!あの子は―――……っ」

「……心配ない、肩の傷は治した。もうじき目覚めるだろう」


美朱に抱きつかれ身動きがとれないうえに、血を流し過ぎたせいで極度の貧血になっているために身体がだるい。

それを気力で抑え込み目を動かせば、軫宿の言う通り浅葱の肩の怪我は軫宿の力で癒されていた。

それに安堵すると共に眉尻がピクリと動く。

なぜ浅葱は翼宿に抱き抱えられているんだ。

しかもこころなし翼宿の目尻が下がりだらしない。


(人の恋人抱きかかえてなにデレデレしてんのよっ!!)


怪我をして気を失っている彼女を心配しているのは分かる。

分かるが!下心が隠し切れてない。




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