紅き蝶 白き魂2

□42話
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「おまえ術者やろ!!どないでもできるやろうがっ!!」

「天帝が定めた運命の輪を外すことなど一介の人間には不可能なのだ…。
救いは太一君が力の制御の為に宝玉を授けたことと、移しとった彼女の穢れを浄化できる存在が近くにいることなのだ」

「浄化できる存在……。それってもしかして柳宿さん、ですか?」

「なのだ」


頭の回転が速く勘の鋭い張宿がハッと顔を上げ聞くと、井宿は頷き返してくれた。


「穢れが一定以上溜まると不調をきたす。そして命が縮まるのも早まる。
その穢れを取り除く事が柳宿の役目なのだ」


井宿の言葉にそれぞれが柳宿と浅葱を思う。

最早二人は切っても切り離せない。それは恋仲だからもあるが、それ以上に浅葱のことを考えれば当然だ。

柳宿が浅葱の命を握っていると言っても過言ではないのだ。


「二人は互いに必要としているんだな。心だけではなくそれ以上に」


軫宿の独白にも似た呟きが仲間たちの胸に響く。

それは翼宿も例外ではなく、井宿に詰め寄っていた距離を少しだけ離し項垂れてしまった。

分かっていた。初めから。

決してこの想いが報われないと。だけど僅かな望みも持っていた。

もしかしたら自分を見てくれる日が来るんじゃないかと。

それはただの願望が見せる夢だったが、時折自分に向ける優しい眼差しに期待してしまう自分がいた。

結局夢は夢で終わる。自分を見てくれる日など来ない。

なぜ対と呼ばれる存在が自分ではなかったのだろうか。考えてもしょうがないのに柳宿が妬ましい。

自分だったのなら、振り向かせるチャンスくらいは貰えたのに。


(……って何考えてんねん!!ええい!!女々しいで俺!!)


仲間を妬むことをするほど自分は落ちていない。翼宿は振りかぶりイヤな考えを消す。

その間に思い出すのは、自分が恋に落ちた瞬間のこと。

まるで仮面を張り付けたような顔が、花開いた満面の笑顔に変わった瞬間だった。

わかっていた。最初から。

好いた男に向けた笑顔に惚れ瞬間から。



――――――――わかっていた。




「あっ!みんな見て!!光がしぼんでいくよ!!」


美朱の声に一斉に仲間たちが光を見る。

翼宿も同じように光を見つめ、記憶の中の満面の笑顔の浅葱をそっと胸の中に仕舞いこんだ。




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