邂逅と安らぎの檻にて
□第5話
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新選組の世話になり一週間、秋風は自分に与えられた一室で眉間に人差し指を当て頬をひきつらせていた。
「知兄…一つ聞いていいか?」
「………なんだ」
「なんだ…じゃない。どーしてここに居るんだ?」
「暇、だったからな。しのには言付けを……」
「しのまで巻き込んだのか!?」
我が物顔で寝そべっていた知盛は、外を眺めながら事も無げに答える。
秋風は盛大に叫ぶと項垂れた。
しのと言うのは隣に住んでいる少女の名だ。
純朴であどけない少女で、年は千鶴と同じくらい。
居候となったその日に仲良くなった。
しかし、なぜだか、同じ女同士の秋風はまだしも知盛にもなついてしまったのだ。
こんなやる気皆無、気力皆無、戦闘狂男になついたのが理解できない。
まだ言仁(ときひと)のように小さな子供なら何となく解るのだが…。
「……来てしまったものは仕方ない、か。
それにしても『毎日』来たら人質の意味がないだろうが…。勿論、誰かに声をかけて入ってきたんだろうな?」
彼の性格とこれまでの経験を考え、とりあえず聞いてみる。
知盛は「人に会わなかった」と悪気なく答えた。
「またかぁーーーーー!!」
「な、何かあったのか!?」
「おい!今叫び声がしなかったか!?」
「………あは、あははは……」
秋風の叫びを聞きつけた藤堂と原田は、勢い良く障子を開け放ち部屋に入る。
そこにはこの部屋の住人以外に侵入者と言えるかも知れない男が気だるげに寝そべっていた。
「おいおい、またかよ…」
「お前なぁ…なんで毎日来るんだよ。
しかも土方さん達がいない時に…」
苦笑いの原田とぐったりと座り込む藤堂に、秋風は申し訳なさそうに眉を下げる。
こちらに厄介になり始めた次の日から誰にも知られずフラリと現れ、ついには一週間連続で通いづめしているのだ。
せっかく逃して貰うために自分が人質になったというのに、これでは無駄ではないか。
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