邂逅と安らぎの檻にて
□第4話
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「昨晩、巡回中に浮浪の浪士と遭遇。相手が刀を抜いたため斬り合いとなりました。
隊士らは浪士を無効化しましたが、その折彼らが『失敗』した様子を目撃され、さらにそれらを無効化しています」
淡々と語る斎藤に秋風は静かな瞳で見る。
千鶴は一瞬肩を震わせ唇を噛んだ。
「……この子は何も知らない」
「と言うことは、あなた方の方は認めるのですね」
秋風の言葉に山南は眼鏡を光らせ、一言一言聞き逃さないようにと僅かに背筋を正す。
「事実だからな。今更言い訳などしない。
しかし――……」
そう言うと一度瞼を下ろし、秋風は再び瞼を持ち上げた。
黒曜石の瞳に強い光が宿り目の前の三人を射抜く。
「この子は関わっていない。斬り合いをしたのは私と兄だけた。
この子は帰してもいいだろう?
それとも、まだ子供の域を脱していない子をいたぶる趣味があなた方にあるのですか?」
「何だと!言わせておけばグチグチとー!」
「よさねぇか、平助!」
「なんで止めんだよ、左之さん!あることないこと言われてんだぞ!」
「今ここで食ってかかっても何も解決しないだろうが!」
思ったことを口にしただけなのに、いきり立った藤堂に原田が止めに入る。
秋風は冷めた目で二人を見やり、興味を失ったように土方に言った。
「……茶番劇、か」
「あぁ?」
「茶番劇染みてると言っている。
身の安全を考慮し、大人しくしていたが無用だったようだな」
そう言うと秋風は立ち上がりいとも簡単に手首についた縄をほどいた。
『え!?な…っ!』
しゅるり、と縄が解け畳に縄が落ちる。
たしかに頑丈に結んだはずだと沖田は眉を寄せ秋風を見上げた。
「おかしいなぁ、ちゃんときつく結んでたはずなんだけど」
「何時なんどきでも己を律し敵に隙をみせないこと。……基本だろ」
秋風は片眉を上げ勝ち誇ったように笑うと、うたた寝をしている知盛を蹴りあげ、ついでに千鶴の縄をほどいた。
「君を親に送り届ける。行くぞ」
「え?」
千鶴は急な展開に目を瞬かせ、新選組幹部を見回し、秋風と寝てるのか気絶しているのか分からない知盛を見た。
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