邂逅と安らぎの檻にて

□第3話
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「おはよう。昨日はよく眠れた?」

「え?…あの…」

「眠れる訳あるか。貴様っ…私が起きている事を見越して座らせただろ!」

「あれ、そうだったけ?自分から座ったから、てっきりその姿勢の方が楽なのかと思ってたよ」

「しれっというな!おかげでどれだけ苦労したと…」

「お前等、静かにしろ!
総司、こいつを揄(からかう)んじゃねぇ。お前も、総司の言う事を真に受けるな」


笑っている男に向かって声を荒らげた秋風の言葉は、眉間に皺を寄せしかめっ面の男によって遮られた。

彼―沖田総司は笑いをこらえたまま「はいはい」と気の抜けた返事を返すにとどめる。

代わりに井上が苦笑いをしながら座るよう促した。

案内された部屋はそれほど広くはない。おそらく、誰かの部屋に集まり話し合いをしていたのだろう。

秋風たちを中心に壁際に三人、そのすぐ隣に三人、目の前に三人と別れ、敵意と好奇を混ぜた視線を送り続けている。

通してみた所、割りと若い連中の集まりのようだった。


「でさ、土方さん。そいつらが目撃者?
ガキに変な男二人だなぁ。ほそっこいし、ガキの方はまだ子供じゃん」


「お前がガキとか言うなよ、平助」

「だな。世間さまから見りゃ、お前もこいつも似たようなもんだろ」


壁際の三人が不躾な視線を送りつつ軽口をたたく。

この中で一番若そうな少年姿の男と、それよりも年上の二人を観察していた秋風は心中で深いため息を落としていた。

好意とは程遠い視線に言葉の数々。出会いが出会いだっただから、それも仕方ない。仕方ないが…正直、辟易(へきえき)してきた。

隣では少女が肩を震わせ、彼らから浴びせられる視線の集中砲火に俯いていた。

反対側に座っている義兄は、少女とは対照的になんともやる気のない顔で寛いでいる。

彼にとって、ここに連れてこられた事などどうでもいいらしい。既に瞼が半分落ちかけている。

もう少しすれば、本気で眠ってしまいそうだ。

敵意ばかりの中、よく寝ていられるな…と呆れていると、眼鏡をかけた男性が微笑をしたまま声をかけてきた。


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