邂逅と安らぎの檻にて

□第2話
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薄暗い一室に押し込まれた三人は、そこで一夜を過ごす事になった。

六畳ほどの部屋で、隅には大小の荷物が放り込まれていることから、ここが倉庫として使われている事が知れる。

ともあれ、嬉しくない待遇に秋風は重いため息をついた。


「………夜が明けた、のか?」


小さな呟きに返事を返す者はなく、言葉は冬の空気に溶けてしまった。


「この少女はともかく、なんでこんな所で寝てられるのかなぁ…」


気絶している少女の隣。みの虫状態になりながらも熟睡している義兄を心底呆れた様子で眺めながら、昨夜の事を思い返していた。

お世話になっている所に運悪く患者が来ていまい、医術の心得が多少ある自分が往診にいったのは別に問題はない。

患者がただの風邪だったのも問題ない。

見かけない顔だと不思議そうにしていた人たちも問題ない。

そう…とある事情があり、お世話になっていると話、少しだけ世間話に花が咲いてしまったのも問題ない筈だ。

それによって帰宅が遅れてしまったことも、それほど気にかけていなかった。

浪士がうろついている京の都は、世間一般からすれば恐ろしく、女一人が夜に外出するなど考えられないだろう。

しかし、秋風は剣の腕に絶対的な自信があり、そんな心配とは無縁だった。

唯一気にかけていたのは、診療所を義兄に預けてきたことくらいだった。

ただでさえ、興味がある事以外全く動かない人だ。ともすれば、居留守を使い客に無人だと誤解を与えてしまう。

だからと少し急ぎ足で帰宅をしていたが、運が悪い日はとことん運が悪いものだ。

薄暗い路地裏から大声が聞こえ、好奇心と人の良さから声のする方に走ってしまったのだから。

後は思い返すだけでも頭痛もの。

三人の浪士が白髪の人間と斬り結んでいる所に遭遇し、そこで診療所にいる筈の義兄と遭遇、壬生狼と呼ばれる集団に捕まってしまったのだ。

不可抗力だと言ったところで、彼らにとって『見てはいけないモノを見た』という事実だけは残っている。

よって、今の状態だ。



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