邂逅と安らぎの檻にて
□序章
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「そこを退けぇーーーーーーーーっ!!!」
御座船へと乗り込んで聞きた源氏の兵を薙ぎ倒しながら、秋風は一心不乱に船尾に向かって駆けだしていく。
すれ違いざまに斬り結ぶ兵はどれも雑魚で、彼女に一閃の傷を負わせることも出来ない。
「早く…っ。あそこに行かなければならないんだ!!道を開けろっーーー!!」
「ひぃっ!や、やっぱりおれ達の敵う相手じゃねぇ…っ」
悲鳴と怒声が交錯する中、全身に血を浴びた姿を気に留める者などいない。
白い陣羽織はすでにその有り様を朱に染め、最早白であった面影は何処にもなかった。
敵味方入り乱れて戦う中、前方に見覚えのある後ろ姿が目に入ってくる。
そして、それよりも前に目的の人物を見つけ瞠目した。
彼―知盛は甲冑を血に染め苦悶の表情で膝をついている。
それを取り巻くように源氏の兵―源氏の神子と八葉たちが周囲を固めていた。
「とも…にい…。知兄ぃーーっ!!!」
「九郎殿っ!戻られませ!鎌倉殿が…鎌倉殿の隊が還内府の急襲を受けっ…!!」
秋風の叫びと源氏の兵の声が重なる。
「なっ…。秋風…っ!?」
「なるほど、やはり君も平家でしたか」
突然現れた秋風に絶句する九郎と、その隣で目を細め納得するように頷く弁慶の脇を過ぎる。
広がる血など気にも留めず、秋風は倒れ伏した知盛の傍に座り込んだ。
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