邂逅と安らぎの檻にて

□序章
1ページ/2ページ


「そこを退けぇーーーーーーーーっ!!!」

御座船へと乗り込んで聞きた源氏の兵を薙ぎ倒しながら、秋風は一心不乱に船尾に向かって駆けだしていく。

すれ違いざまに斬り結ぶ兵はどれも雑魚で、彼女に一閃の傷を負わせることも出来ない。

「早く…っ。あそこに行かなければならないんだ!!道を開けろっーーー!!」

「ひぃっ!や、やっぱりおれ達の敵う相手じゃねぇ…っ」

悲鳴と怒声が交錯する中、全身に血を浴びた姿を気に留める者などいない。

白い陣羽織はすでにその有り様を朱に染め、最早白であった面影は何処にもなかった。

敵味方入り乱れて戦う中、前方に見覚えのある後ろ姿が目に入ってくる。

そして、それよりも前に目的の人物を見つけ瞠目した。

彼―知盛は甲冑を血に染め苦悶の表情で膝をついている。

それを取り巻くように源氏の兵―源氏の神子と八葉たちが周囲を固めていた。

「とも…にい…。知兄ぃーーっ!!!」

「九郎殿っ!戻られませ!鎌倉殿が…鎌倉殿の隊が還内府の急襲を受けっ…!!」

秋風の叫びと源氏の兵の声が重なる。

「なっ…。秋風…っ!?」

「なるほど、やはり君も平家でしたか」

突然現れた秋風に絶句する九郎と、その隣で目を細め納得するように頷く弁慶の脇を過ぎる。

広がる血など気にも留めず、秋風は倒れ伏した知盛の傍に座り込んだ。

.
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ