天満月

□閑話4-2
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「あんた、ケガしてんじゃないの!」
「うあぁぁあああ!」
「うわっ!」

血が出てないか確認しようと触れた瞬間、またも魏が苦しみだした。

「おい!なにしたんじゃ!?」
「し、知らないわよ! ただ耳怪我してたからちょっと確認しようと触っただけよ!」

翼宿の叫びに柳宿は分からないと返す。
美朱と柳宿が触れて苦しみだしたということは、もしかしたら魏は敵の術にかかっているのかもしれないと井宿は辺りを探り始めた。
星宿は実体がないでの触れることもできず顔を顰めていた。

「……触っただけで鬼宿が叫びだしたということか。敵の術、なのだろうか」
「む。ダメなのだ。敵の気配はないのだ。ただ鬼宿の身体から何かの術の力は感じ取れたのだ」

井宿によれば、おそらく敵は向こうの世界で魏に何らかの術をかけたと思われるそうだ。美朱となぜか柳宿がふれると苦しみだす術を。
ちなみに、二人以外が魏に触れても彼は苦しまなかった。

「なんで私たちだけ」
「そうよ。美朱はあり得るかもしれないけれど、あたしもなんて敵は何考えて……。ハッ!もしかして、あたしのこの美貌になにか勘違いして彼との仲を――」
「アホか。そんなわけやったら、さすがにたまが可哀想やで。もしかしたら、オカマに触られると苦しむ呪いでもうけてんとちゃうんか!?」
「どんな術よ!」
「だばっ!」

見当はずれな事をいう翼宿を拳一つで黙らせ、悶絶している魏を一瞥する。
美朱と自分にあって、他の仲間たちにはないもの。もしくは、自分たちに共通するもの。
美朱は女で自分は男。美朱は朱雀の巫女で、自分は朱雀七星士。美朱は朱雀の力を使えるが、自分は元々己に宿っていた力を増幅したもの。
そこでハッと柳宿は顔を上げ、胸元から首飾りを取り出した。

「もしかしてコレが原因かもしれないわ」
「それは浅葱の石がついている首飾りか」

ふむと星宿が首飾りを見て言う。柳宿は「はい」と頷くと、自分と美朱の共通点を述べた。

「あたしと美朱に共通していることは、直(じか)に朱雀の力が身近にあるということ。美朱は巫女だから当然のことだけど、あたしにそんな力はない。あくまで加護程度のもの。
となれば、彼女と共通点は一つだけ。あの子が持っていた石」

形代であった浅葱の物ならば納得がいく。
物は試しと魏に首飾りを近づければ、予想道理の反応が返ってきた。

「うわぁぁあああ!!」
「やっぱり……ってうっさいわよ!」

魏の声がうるさく思わず手短な布を口に突っ込んでおく。
何はともあれ原因が分かって清々した。

「自分で叫ばせてその仕打ち……」
「なによ。文句ある? 忘れているようだけ表は店なのよ。変な叫び声で店の信用落としたくないのよ」
「ア、ハイ。ソウデスカ」

実ににこやかに笑う柳宿に全員が一斉に首を振った。

「ごほん。それでどうやって鬼宿を術から解放させるかだが」
「石を魏に還したらダメかな? 元々この石は魏のだし、力が戻ったら術にも対抗できるかもしれない」
「それでも難しいかもしれないのだ。石の力を得ても今の鬼宿には微量な力にしかならないのだ。」
「そないなら、どうしたらいいや!?」

それが分かれば苦労はしない。とりあえず石だけでもと渡すことにした。問題解決はその後だ。
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