天満月

□9話
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結局、お昼休みも浅葱を守るように囲んだ三人と一緒に過ごし、なんだかんだと放課後になってしまった。

できれば例の巻物の件を確認したかったのだが諦めた。少しでも離れると、誰かがついてくるのだ。

まるで目を離したら、危険なことに飛び込んでいくかもしれないといわんばかり。

保護者かといいたくなる過保護っぷりに、浅葱は笑うしかなかった。

ちなみに愚痴をこぼしたら「確実にお誘いが来る!」と意味不明なことを言われた。

三人の心配は、フリーであり今遊び人の噂を流されている浅葱を狙う輩に、本気で迫られるかもしれないということだったりする。

遠巻きにされ倦厭(けんえん)されていると思っている浅葱だが、実際はその容姿と意外と面倒見のいい性格に密かに人気があったりするからだ。

この機会に接点を持ちたい、あわよくばと下心を出す人が現れかねないための措置。知らぬは本人ばかりだ。

三人から解放され、やっとのことで巻物のことを探しに行けそうだと思っていると、前方から唯が走ってくるのが見えた。

あの怪我では走るのもやっとだろう。よく見ればかなりつらそうに見える。


「唯!」

「浅葱!ちょどよかったコレ美朱に渡して!」

「え?巻物!?」

「書記の先輩が持ってたんだよ。いやー、カマかけてみたら当たってさ」

「だ、大丈夫だったったの?」

「ふっ、甘くみないでもらいたいね。護身用にバット持ってたし」

「唯……」


前々から勇ましいとは思っていたが、まさか武器を携帯してとは。

呆れるやら感心するやら。


「取り返したのはいいんだけどさ、美朱に渡さないとヤバいことになりそうで」

「……もしかしてあの子、また何かに首つっこんでるの?」

「いやただの感。けど今日は各学年のクラス委員が招集されるからね。そこで祀行がなにかやると思うんだ」

「そういえば、委員長たちがそんな話をしてたわね。たしか第二会議室……わかったわ。
巻物は預かるから、唯は休んでて」

「わるい。助かる」


唯から顔色を悪くしながらも巻物を渡される。この大怪我で走って来たのだから無理もない。

浅葱は巻物を握り締め、第二会議室……の見える校舎裏を目指した。
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