天満月
□5話
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教室に戻れば、こちらに気づいた藤原が駆け寄ってくる。
浅葱はもしかして心配かけたのかと申し訳なく思った。
「あ、帰ってきた!もうヘイキなのか?」
「ええ。ごめんなさい、急に連絡して」
「いいって。これくらい」
人好きするカラッとした笑みで藤原が返す。
彼女の後ろにいた周防と風霧もホッと安心した様子で、ああこの人たちと友達になってよかったと心から感謝した。
「そういえば妹さんも保健室だって聞きましたけど、話できましたか?」
「……」
風霧の何気ない問いに、ぴたりと浅葱の身体が止まる。
不思議に思い三人が彼女を窺えば、それはそれは冷たい空気と共に「ええ」とだけ返された。
朱雀のことや魏のこと。朱雀七星の仲間たちのこと。様々な事を聞いたが、今はそんな重要な事よりも二人の抱き合っている姿を思い出してしまったからだ。
やっぱり解せない。なぜここに魏がいた。しかもべったりとくっついて。大学はどうしたというのだ。
それに少しだけ、ほんの少しだけ羨ましさと妬みを植え付けさせられた気がする。
自分たちと彼女たちの違いをまざまざと見せつけられたのも一因だ。
浅葱は脳裏から二人を追い出し、次の授業の準備を始める。あとは大鳥に連絡を入れるのも忘れない。
黙々と動く浅葱に、三人は今度も地雷を踏んだらしいと冷や汗を流していた。
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