天満月
□5話
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「……転生は」
「完璧じゃなかったらしい……。オレの記憶ってやつ石になって向こうにあるから、それを探して取り戻さななきゃいけねぇんだと」
「そうしないと、七星士が揃わないんだって。それに……」
「それに?」
言いよどむ美朱に首を傾げ、魏に説明を求める。けれどもその魏も、苦い顔で何も言わない。
二人にとってなにか辛いことが起こるのだろうか。
記憶が石となり散らばったらしい魏。それを集めようとする美朱。そして魔神という存在。
浅葱はふむ。と嘆息し、まとまらない話をなんとか整理した。
これは随分と複雑で難しい。魔神を何とかしなければ仲間たちは転生できないし、魏の記憶を集めなければ世界崩壊をも招くらしいらしい。
「それにね、記憶ないと魏消滅しちゃうの!そんなのイヤだし、みんな生まれ変われないのもイヤ!だからあたし、天罡と戦う!」
「……」
まさか消滅するとは。勢いよく顔を上げ必死に言う美朱に、言葉が出ない。
転生は完璧ではなく記憶が石になり、それがなければ消える。つまり記憶がない魏はまだこちらの人ではないということ。
時空を超えての転生にはそれほど負担がかかるということか。それに……と顔色が優れない魏を窺う。
それにこちらの人間でないということは、彼がいままで歩んできた人生は作り物。両親も故郷も何もかもが作り物ということになる。
初めからこちらに転生したのではなく、途中から――おそらく再会した半年前に彼はこの世界に存在できるようになった。
それ以前は存在していなかったということ。結局は朱雀は奇跡を起こせても、時空を歪めて存在させるには力が足りなかったのだろう。
それでも解せないことはある。記憶が石になったということだ。
時空に圧力でも存在しなければ、石になって飛び散ることはないような気がする。
でなければ、記憶が石になどなるものだろうか。だいたい、記憶というものは消えるもの。
記憶そのものが消え、ここに存在しているのならしっくりくるのだし。
これは二人が言う魔神とやらに関わりがありそうだ。
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