天満月
□5話
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まさか浅葱は向こうへは行けないと聞かされた美朱は、慌てて巻物を広げ腕時計を近づける。
しかし光など出ることはなく、ただ静寂が支配した。
「……ほらね。だからもうあなたの助けはできないの。
あるとすればこちらで調べものがあった時、手を貸すくらいかしらね」
「そんなぁ……」
浅葱も行けると思っていた美朱は、泣きそうに顔を歪める。
柳宿に会わせてあげたいのに、それすらできないなんて思わなかった。自分たちに朱雀の願いを譲った二人。
そんな優しい二人が再会することはもうできないのだろうか。
ぐっと唇を引き締め浅葱達を想う美朱の肩を魏が引き寄せる。彼も想いは同じだと態度で示した。
「そういうことだから、一言欲しいわ。……ねえ、美朱。みんな元気だった?」
「……翼宿に会ったよ。紅南国に魔物が出始めて家族が心配だからって里帰りしてた。
翼宿変わってなかったけど、向こうはもう二年経ってるんだって」
「そう……」
「それから井宿も元気そうだった。あとは太極山に星宿たちがいたよ。
本当はとっくに生まれ変わってるはずなのに、『魔神』ってヤツが邪魔してるって。
……そいつ、心宿が崇めてた神様みたい。それでね、そいつ朱雀を消滅させて世界を壊そうとしているの!」
「よくわからないわ。つまりどういうこと?」
「魔人――天罡って名前らしいんだけど、世界征服をしたいらしいんだよ。
でもそのために朱雀と朱雀七星士が邪魔なんだって。だから排除するって言ってた。
それにね……魏、鬼宿のときの記憶がないの」
「記憶がない?」
そんなまさか。浅葱が驚き魏を見れば、顔色悪く頷き返された。
再会の時、確かに覚えている素振りをみせたし、今までそんな風ではなかったのに。
そう問えば、漠然とした記憶はあると魏は言う。細かいところは覚えていないが、家族のことや仲間のことは何となくわかるらしい。
ただ、仲間内であった出来事は覚えていない。例えばどうやって美朱と出会ったのか。どうやって仲間たちと苦難を乗り越えたのか分からなそうだ。
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