天満月
□8話
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「……ともかく、みんな強いのは知っているし信じましょう。
それにあの転校生がこっちにいる以上、こっちでも何か起こすだろうから用心しておくことしかできないわ」
「うん、そうだよね」
解決方法がない現状では、ここであれこれ考えていても意味はない。浅葱の言葉に美朱は頷き返す。
美朱の不安そうな顔を見ながら、浅葱は仲間たちを思いわずかに瞼を伏せた。
自室に戻り写真立てを見下ろす。
にこやかに笑いあう仲間たち。その背後には懐かしい宮殿が立っている。
指を縁に沿って這わせると、そっと写真立てを持ち上げた。
「無事ならいいのだけれど……」
誰が聞くともなく、写真の中で微笑む柳宿にむかって呟く。
ふとその目に腕輪が入ってきた。柳宿が太一君にもらった大切な腕輪。戦闘時には籠手にも変化し、彼の力を増強させてくれる代物。
「腕輪……。そうよ!手伝えないけれど、これがあれば戦いになっとき役に立つわ!」
自分が持っていても宝の持ち腐れでしかないのなら、元の持ち主に返した方がいい。
浅葱はしまっていた腕輪をとると、美朱の部屋の戸を叩いた。
―――――――
「お!やっぱり祀行君が生徒会長だ!」
お昼休みに入り、生徒会選挙の結果張り出しを見上げていた浅葱は、聞こえて来た藤原の声に振り向いた。
「藤原さん一人?」
「そうだよ。二人は図書室にいってる」
「そう。てっきり三人で見に来ると思っていたわ」
「あのねぇ、いっとくけどいっつも一緒ってわけじゃないんだから、そんな不思議そうな顔しないでくれないかなぁ」
「あら、ごめんなさい」
一緒にいるところをよく見かけるために、三人ワンセットと思っていたようだ。
むくれている藤原に謝りながら、会長の隣に書かれている副会長職に目をやる。
美朱のインパクトがでかかった爆笑応援のおかげもあり、唯が見事副会長に当選していた。
これで一年が会長と副会長を務める異例の生徒会になった。一般生徒の不安はこの生徒会がうまく機能するかといったところだろうか。
対して浅葱の不安は祀行が今後どう動くのか。会長になったことで、学校に関して一定の権限をもち、学校全体を支配できる力を持った。
彼の目的が学校の支配だとしたら、もうこの時点で自分たちの不利は確定したも同然。
浅葱は遣る瀬無さで顔をしかめた。
その日の帰り、帰宅途中に兄から連絡があり唯が大ケガをして病院に運ばれたこと。
美朱が生徒会役員がいる中で、祀行にせまるという不祥事を起こしたことを知った。
唯のケガは廊下の窓ガラスが割れ、その破片を浴びたせいだという。
美朱のことは詳細を教えてはくれなかったが、厳重注意だけだろうとだけ教えてくれた。
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