天満月
□閑話2-1
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「まいったわ。まさか半年かかるなんて」
「ごめんなさい、康琳。……私のために来てくれたのに」
「あら、やだ。アンタに言ったんじゃないわよ!鳳綺。実家の方が忙しくて、なかなか来れなかったって思っただけよ」
王宮の一室。皇后の寝室に通された柳宿は、横たわる親友に明るく笑い飛ばした。
ここに来ようと思い立ったはいいが、その日から実家の呉服屋が忙しくなり、ずるずると半年来れずにいた自分が悪い。
そうこうしているうちに、親友が手紙のやり取りすら出来なくなってしまうくらい衰弱してしまった。
もう少し早く来られたら、彼女は寝たきりにならずにすんだのかもしれない。僅かにでも生きようとする気力が湧いてくれたかもしれない。
しかし結局は想像だ。自分は家のことでなかなか来れず今日やっと王宮に来たし、彼女は悲嘆にくれ寝たきりの状態だ。
心の慰めになるはずの皇太子とは接触を持つこともないと専属女官はいう。
我が子を疎ましく思っているわけではなく、星宿に対して純粋な愛ゆえに彼の子を見ると悲しさが増すのだろう。
(ほんと、それでもあたしには羨ましいくらいなんだけどさ)
我がを子通して愛する人を感じられるなんて。
胸が張り裂けんばかりに辛く悲しいことだろうが、それでもその存在を感じ取れるのは喜びでもある気がする。
子を持たない自分には分からないことだが、もしかりに彼女――浅葱との間に子供がいたらきっと大事にする。
母親を知らずに育つ我が子を不憫には思うだろう。でもそれでも、彼女の分まで慈しみ愛情をもって接すると思う。
だからだろうか。親友のこの状態にわずかばかり怒りがこみ上げてきてしまう。
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