天満月
□7話
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『明日巻物の中に行ってくる』
そう昨日の夜言われ、浅葱は心ここあらずの状態で登校した。
予告するよう言ってはいたが、いざ行くと聞かされると自分も一緒に行きたいという欲求が沸き起こり少し落ち込んでいた。
自分が巻物の中に行けないことはもう実証されているのに、それでも行きたいと思ってしまう。
向こうでは二年もの月日が経っているという。翼宿や井宿のことは聞いた。二人とも元気だということも知っている。
ただ柳宿とはまだ会っていないらしいので、彼の近況が知りたいのだ。
まだ自分を思っていてくれているだろうか。それとももう別の女性(ひと)が隣にいるのだろうか。
ずっと思い続けるという約束はまだ有効だろうか。
浅葱はぼんやりとに上がっている選挙候補者を見つめながら、ただただ柳宿を想っていた。
「――――皆さま!本郷唯に清き”仕置き”一票を!」
「え?」
「あははは!!なに妹ちゃんボケかましてんの!!さいこー!」
いつの間にか唯の候補者演説になっていたらしく、美朱のとんだ演説に会場内は爆笑の嵐だ。
前の席にる藤原の爆笑する姿と、会場内の笑いに美朱がバカな言い間違いをしたと分かった。
「あはは!し、仕置きって……っ!」
「……」
「清き一票」が「お仕置きの一票」に変わっている。
確かに爆笑してもおかしくないが、姉妹としてかなり恥ずかしい。なんでそんな間違いをした美朱。
舞台袖から唯が慌てて駆け出し、美朱の後頭部を勢いよく殴ってツッコミを入れている。
これは生徒会の選挙のはずで、漫才大会の舞台ではなかったはずなのだが。
「バカ美朱……っ」
これでは自分まで言い笑い者だ。現に近くでは美朱の演説に、姉である浅葱も、実はこんな性格なのではないかと、ひそひそと話されているのが耳に入ってくる。
断じて違う!と全力で否定したいが、全校生徒が集まる前では言い出せなかった。
羞恥をこらえ唯の演説を聞くことに徹する。周りはシャットアウトだ。
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