天満月
□6話
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今日は異常に疲れた。考えることが多すぎて気疲れしてしまったのだろうか。
浅葱は制服から私服に着替え、冷蔵庫を覗き込む。
食材は十分に揃えているので、どんなものでも大体は作れそうだ。今日は美朱も夕食を食べるだろうし大盛りを作る用意をしていく。
タケノコが旬なので安売りで買えたし、これをメインに作っていくことにする。
まずはタケノコご飯だ。下ごしらえは買ってきた時にしておいたので、灰汁抜きは済ませてある。
都会なのに産地直送で販売されていたため、皮付きのまま売られていた。まぁ、そのおかげで安く手に入ったので、多少の手間は諦めている。
あとは少し余りそうなので天ぷらにして、他に山菜も揚げよう。春は山の幸が美味しい季節で作るのが楽しい。
春キャベツと新玉ねぎはサラダにして、他にもスープに使用する。
今日の献立はタケノコご飯と山菜の天ぷら。春キャベツのサラダに、新玉ねぎのスープだ。
出来上がるころには兄と妹も帰宅している頃合いだろう。
鼻歌をしつつ手際よく調理していくと、不意に携帯が震えだした。手を洗い中身を見れば、兄は遅くなるとのこと。
冷めては美味しくないのだが、兄にも付き合いというものがあるし仕方ないと了承と返した。
「ただいまー」
「おかえり。美朱、今日はタケノコ尽くしよ」
「あ……えーと、ゴメン浅葱!今日も魏の家にいこうかなぁ……って」
「……」
今日もか。今日もなのか。せっかくこうして彼女のために大盛りで作っていたのに、無駄になるのか。
浅葱は無言で眉を跳ね上げる。そして「そう……」と短く返すと、何も言わず作業を進め始めた。
「怒ってる?」
「いいえ、呆れているだけよ。……昨日もそうだったけれど、そういう連絡は早めにしてちょうだい」
「する!そうするから!そんなにピリピリしなでぇ」
「していないわ。そうそう、それならお弁当もいらないわよね?明日魏の家で作って持っていくんでしょ?」
「それはいる!!たぶんそれどころじゃなくなるだろうし、浅葱料理上手だからすっごく楽しみにしてるんだよ!!」
「……」
煽てられても嬉しいとは思わず、浅葱は嘆息して「わかったわ」と美朱に返す。
「でもお弁当くらい自分で作れるようになりなさい。将来困るでしょう?」
「……が、頑張る!」
美朱の意気込みに、どこまで上達するのか不安だ。
彼女は味覚音痴ではないので、手順を間違えず、調味料の分量や取り間違いをしなければまともに作れると思うのだが。
そもそもそそっかしいので、気が付けばそんなミスをしている。
やっぱり今度、料理を教えよう。月に二三教えれば、いずれ上達する……かもしれない。
ちょっと予測的願望が入っているが、これも美朱のためだ。そして魏の胃袋のために。
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