天満月
□5話
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「……つまり、奈良に行ったときに朱雀に助けを求められて、巻物を貰ったことが始まりってことね」
「う、うん……」
「それで昨日、魏の家に泊まった時、巻物の中に……紅南国に行けるようになったと」
まるで尋問のように、向かい合わせで質疑応答する。
浅葱から発する冷えた空気に、美朱と魏はただ縮こまりブリキ人形のようにぎこちなく頷いていた。
一言でいえば怖いに尽きる。
いつもと同じ表情だというのに、纏っている空気が怒り表していた。
小言や注意で怒ることはあるが、こうして本気で怒ることは滅多にない。それだけに今の浅葱は二人をビビらせるのに十分な威力を持っていた。
「で、でもね。時間制限があるみたいで……こっちの時間で一時間くらいしかいられないみたいなんだ……けど……」
「そんなことはどうでもいいわ。それより、なんでそんな大事なコト言わないで、また向こうに行っていたのかを知りたいわ」
「う……っ」
浅葱のもっともな言い分に、美朱は言葉を詰まらせる。
確かに昨日の時点で分かっているなら、朝一番に浅葱話しておくことだっただろう。
でもあの時の自分は、魏と新婚気分を味わっていたためにそこまで気が回らず、後回しにしていたことは否めない。
それに魏の存在に関わることもあり、早く向こうへ行きたかった。そのために浅葱に話す前にもう一度行こうと思ってしまった。
そこまで思い出し自分のことばかりだったことに気づいた美朱は、しゅんと肩を落とし「ごめん」と素直に謝った。
「……今度はちゃんと話てから行きなさい。私はもう向こうへは行けないようだから」
「行けないってどうして」
「朱雀を召喚し終えた時点で、私はもうあなたの形代じゃなくなったということよ。
現に広げてあった巻物に触れても私は向こうへは行けなかったわ」
「あ……でも時計っ。この時計に朱雀星君がいるらしいの。巻物を広げてこの時計を近づければ……あれ?」
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