天満月

□2話
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翌朝、少しだけドキドキしながら登校すれば、目的の人物がもう既に来ていた。

彼女の近くには同じ系統の大人しそうなメガネの子と、ボーイッシュに切りそろえられた短髪の子がいた。

友達なら挨拶も普通にするわよね?と、若干挙動不審な浅葱だったが、三人の仲良さげな雰囲気に足がすくんでしまう。

挨拶はしたいが、周防以外はクラスメイトだということくらいしか分からない。

迂闊に近寄れないと戸惑う浅葱に、ボーイッシュな子がこちらに気づき太陽のような笑顔で声をかけてきた。


「おはよう、夕城さん!奏から聞いたんだけど、あのシリーズ読んでるんだって?」

「え、おはよう。…そうだけど、あの?」

「うわ!こんな近くに同士がいたなんて気づかなかったぁ!あの本どこまで読んだ!?
結構生々しい描写あっただろ?」

「え、あ、うん。そうだけど、まだ半分も読んでないから……」


あまりの迫力に押される浅葱を見かねて、メガネの子と周防まで来た。

周防とメガネの子は同じ背丈で、どちらも整列すると前から一番か二番目くらいの高さしかない。

対してボーイッシュな子は、スポーツでもやっているのか健康な肌をしているし背の高さも浅葱より少しだけ高かった。


「おはよう夕城さん。ごめんなさい、楓たちに昨日のこと話したら興味を持ったみたいで」

「おはよう周防さん。それはいいんですけど、この食いつきよう…もしかして彼女もあの本のファンですか?」

「アタシだけじゃなくて、絵里もだって。あー、そういや自己紹介必要なんだっけアンタ」

「……」


まさかクラスメイトの名前を覚えていないことまで話したのか。

視線だけで問えば、周防は手を合わせ「つい言ってしまった」と謝っている。

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