ANOTHER GAME

□梅雨のある日、君との距離
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じっとりと纏わりつく湿気。



どんよりとした空。



梅雨独特の匂い。



嫌な予感がして、次第に足取りが早くなる。










「………雨だ…。」



案の定空から落ちてきたそれは、次第にあたしの髪の毛を濡らしていく。


運の悪いことに、傘を持っていなければ、学校に引き返そうにも引き返せない距離。



かといって家までも遠い。



天気予報じゃ、今日は降らないって言ってたのに………。



絵里香も美怜も部活で、果莉菜は友達とどこかへ寄ると言っていた。



傘を借りる相手もいない。



傘を持ってきてもらおうにも、親は仕事でいない。



おまけに、コンビニも近くにない。



「ついてないな……。」


そんな呟きは、激しさを増す雨にかき消されていった。



これ以上濡れるのは耐えきれないと思い、あたしは近くの公園で雨宿りすることに。



屋根の下のベンチに腰を下ろす。そこからあたしはぼんやりと景色を眺めていた。



せわしなく通り過ぎていく人達。それもだんだんといなくなり、辺りは止むことのない雨音に包まれる。



すると、低く唸るように響いてくる雷鳴。






うそ、やだ………。



あたしの顔が引きつる。



最悪だ。こんな時に限って雷なんて………。



遠くで鳴っていた雷もだんだんと近付いてきていて、ぴかぴかと光り始めた。



それにつれて、雷鳴も大きくなっていく。



刹那、目の前が明るくなったかと思うと、体を引き裂くような激しい雷鳴が鳴り響いた。




「―――――っ!!」



あたしはは頭を抱え込むようにして耳を塞ぎ、肘を目の前のテーブルについた。



あたしは雷が大の苦手。数少ない弱点の一つ。



恐いよ………。



がたがたと体が小刻みに震える。




雷鳴と雨音に、存在が消されていくような感じがした。





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