ANOTHER GAME
□すべて、彼色に
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あたしを包む温もり。目覚めたら、翔悟の腕の中だった。
ああ、気を失ったのね………。
寝起きと、疲労で鈍る頭でぼんやりと記憶を辿っていた。
すべての元凶は、翔悟が一緒に風呂に入ると言い出して、無理矢理あたしを浴室に押し込んだことだ。
ほんとに、ろくなことを考えないんだから。
この、性欲魔神め。
「誰が性欲魔神だ」
降ってきた低い声に、心臓が跳ねた。
「し、翔悟……起きてたの?」
……ヤバい。どうやら口に出てしまっていたようだ。
「ああ、ずっと起きてたさ。それにしても……性欲魔神、ねぇ」
翔悟の瞳が妖しく光り、その口元にははっきりと笑みが刻まれている。
危険を察知して腕から抜け出そうと思っても、まるで蛇のように絡みついて離れてくれない。
ささやかながらも足掻いていると、翔悟はあたしの耳元に唇を寄せた。
「お前だってあんなに悦んでいたくせに、そういうこと言うんだ?」
「なっ……!」
「覚えてるだろ?鏡に映った姿を」
囁かれると同時に耳朶を舐められて、文句は甘い痺れに溶かされて消えていく。
身体の奥に灯を点けられ、意地悪な囁きが全身に熱を広げていく。
嫌と言うほど覚えている。浴室での出来事を。
響くはしたない声。快楽に溺れきった、浅ましい自分の姿。
あんな姿をいつも翔悟は見ていたと思うと、今すぐにでもその記憶を消去してやりたくなる。
耳朶への愛撫が更に記憶を掘り起こし、あの時の感覚まで蘇らせていく。
いや、何で――――?
触れられてもいない箇所が勝手に疼き始める。
じくじくと、確実にあたしの身体を侵蝕していく。
耐えるように、唇を噛み締めた。
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