ANOTHER GAME
□誘惑チラリズム
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面倒極まりないこの遠足。
どうせだったらどっかのテーマパークにすればいいものを。
しかしバス移動だということを聞き、俺はサボるのを止めた。
だって、移動の間ずっと雅と隣にいられるではないか。
「はい。雅、チョコレート。」
「ありがとー美怜。」
そんな俺の気持ちも知らずに、雅は後ろに座っている柊と持ってきているお菓子を交換し始めた。
楽しげな彼女を見ているのも悪くはないが、何とも複雑な心境だ。
ちらりと横目で見て、俺は心の中で盛大なため息をつくこととなる。
雅は座席の上に膝で立ち、後ろを向いていて。
短いスカートから伸びる白い脚は、俺を誘惑する。
触れたいのに触れられないこのもどかしさは俺にとって生殺しだ。
頼むから……普通に座っていてくれ。
無意識のうちに目線がそちらにいってしまう。
バスは高速道路にさしかかり、少しカーブが続く。
それが少し急だったのか、はしゃいでいたからか分からないが、雅はバランスを崩した。
「わっ……!!」
彼女の体がこちらに傾く。
掴まる物が無かったため、そのまま俺の元にダイブ。
受け止めようとして、互いに抱き合う形に。
「―――っぶねーな………。」
不意をつかれて心臓は爆発寸前。俺は雅の体をゆっくりと引き剥がした。
その瞬間、ふわりと甘い香りが鼻を掠めて。
ほんのりと頬を赤く染めて俯く彼女の表情にとてもそそられた。
「………大人しく座ってろよ。」
「うん………。」
でないと俺の理性が保たないから。
***
帰りのバス内で雅に身を預けて眠っていた俺が目を覚ますと、いつの間にか立場が逆になっていた。
そっと体をずらし、顔をのぞき込む。
夕日に照らされて長い睫毛が影を作っていた。
起こさないように、俺は慎重に顔を近づける。
そして軽く触れるだけのキスをした。
これくらい、さっきの礼としてしてもいいだろ?
満足した俺は再び目を閉じ、眠りに落ちていったのであった。
end
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