弐拾萬打感謝企画

□現実問題
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【現実問題:現実)実際にあること 問題)解決すべき事柄】

扉を開けると、そこには茶色い世界が一面に広がっていました

・・・・・・

ここは彼女の部屋の前。携帯を片手にインターホンを押したのはいいが、その直後から扉の向こうではガタンやらドサッやら大きな物音が聞こえてくる。

(アイツ携帯放り投げやがったな…)
自分の耳に当てていた携帯はまだ彼女のソレに繋がっているはずだけど、きっと手元からは離れてしまったのだろう。小さくため息をついて音を拾うだけとなった携帯をポケットにねじ込んだ。

この一週間、彼女とは会話らしい会話をしていない。原因は…うまく噛み合わなかったってことなんだろう。彼女は素直になれなくて、俺は受け止める事が出来なかった。学校で彼女の顔を見る事はあったけど必要なこと意外は話さない。普通に戻っただけだと言われてしまえばそれまでだが、このままで終わらせたくなかったのは俺だけじゃないと思う。

(お前もちょっとは協力してくれよ)
俺に合わせてばかりいた彼女が珍しく"この日が良い"と指定した今日、たまにしか言わない我が儘をこんなことで流したくもなかった。今、俺の左手に捕まれた"コイツ"はきっと俺を助けてくれる。どたどたと扉の向こうから足音が聞こえ、俺は飛び出してくるかもしれない彼女を見越して手にした"相棒"を盾のように身構えた。

「せん…せっぶふッ!!?」
「うぉッ!?」
思っていた以上に勢いよく飛び出してきた彼女。見事、俺が手にした物体に顔面から突っ込んできてくれた。
「?」
「あっぶねぇな」
ぽふ、と顔を上げた彼女は一体自分になにが起こったのか理解できていないらしく目の前の物体をじーっと見ると、ようやく俺と目を合わせた。
「せんせ…」
「おー」
「なに、これ」
「あぁ、お前コレ好きだろ?」
俺に首根っこを捕まれるようにぶらさがる"相棒"は大きさこそは枕ぐらいだが、彼女が好きだという"くま"の顔したキャラクター。
行き慣れない店で首に大きめのリボンを巻いてもらったソイツを、ホラ、と手渡せば…当の本人はきょとん、としたまま動きを止めてしまった。
「私に…?」
「他にいねぇだろ」
「あ…ありがとうございます」

彼女はなぜこの日が良いのか理由を何も言わなかった。もちろんどこかに行きたいとかも何が欲しいとかも何も言わず、一緒に居たいとしか望まなかった。
「つーか、お前今日誕生日なんだろ?」
「…え」
茶色い相棒を抱きかかえ驚く彼女に「名簿見たんだよ」と種明かしをしてやれば、彼女は一瞬だけ笑顔を浮かべたがすぐに涙が溢れてきた。

地面に打ちつけるぱたぱたと言う音、雨は少しずつ強くなっているらしい。今日はどこにも行けないが、俺だけが彼女を祝ってやるにはうってつけの天気だった。


・・・・・・
◇元親先生のお話で誕生日ネタ(赤緋様よりリク)
…っつーかこのリクちょう萌えた(どーん)赤緋さまったらちょう可愛いっちゃもん。つかこのシリーズのラストを最初から分かっていたのはリクしてくれた赤緋さまのみですねwwwいやはや楽しかったです。赤緋さま、遅れましたがお誕生日おめでとうございました(´ω`*)そして、改めまして企画参加ありがとうございました!!


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