弐拾萬打感謝企画

□久露輝動
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【久露輝動:百人一首13番】

クリスマスなんて、
自分にとっては酷く無関係な行事だと思っていた
・・・・・・・・・

半端なく忙しいこの季節。つい先日、新しい家族が増えた同僚は毎日そわそわとしながら家族の待つ自宅へと帰っていく。それを見送り、改めて戸締りをして帰るのが最近の自分の日課でもあった。
(…さっぶー…)
外に出ればもちろん真っ暗で、冬の空気は肌を突き刺すように冷たい。かじかむ指先をコートのポケットに突っ込んで、ただのハコ扱いされている携帯を見ることもなく家へと向かって足を進めていく。無駄に透き通った空に吐き出される呼吸は白く、昼間は人通りの多いこの道もこんな夜中にもなれば誰の影も見当たらない。すぐ取り出せるように自室の鍵をポケットの中で遊ばせながらあっという間に到着したマンションの2階へと駆け上がった。

足を止めた自室の前でふと、いつもとは違う気配を感じる。近くの部屋だろうかと思いながら扉に鍵を差し込めば、なぜかこの"自室"は開いていた。

すっかり疲れて帰宅したのにこれから空き巣みたいなものに対処しなきゃいけないなんて本当に面倒だ。つきたくなった溜め息を堪え、音を立てないようゆっくりと扉を引き開ける。
(…わざわざ俺様の部屋じゃなくてもいいってのに…)
数センチ開いたところから部屋の明かりが細く漏れ、足元が少しだけ照らされたが物音は全く聞こえてこない。更に扉を引き寄せれば見慣れたコンクリート張りの玄関が少しずつ視界に入ってくる。並べていた自分の靴が散らばった形跡は一切なく朝と全く変わらない状態の玄関。その中に、
(!うそ、だろ)
自分の物ではない靴が一足、そこに置かれていた。
思わず玄関を施錠することも忘れ、ばくばくと騒ぎ出した心臓を落ち着かせることも出来ずにはじかれたように奥の部屋へ駆け込んだ。
「ぁ」
「…っ、はぁ」
そこには、予想通りベッドにもたれかかるようにペタリと座った彼女の姿がある。
「…おかえり」
「名前、なん…で」
ここは自分の部屋のはずなのになんで彼女は自分以上に違和感なくそこにいるんだろう。
「…さすけ」
その声で、名を呼ばれたのはいつ以来だ?薄れかけた記憶と同じ、少し甘えたクセのある声。ほんの少しだけ震えて聞こえるのは、今、自分が感じている気持ちと同じだと思ってもいいんだろうか。
(さすけ、…じゃあね)
ふぅ、と大きく息を吐き、きょとんとこちらを見る彼女に向かい合う。今、自分がどんな顔をしてるかなんて想像すらもしたくない。それよりも、去るものは全て排除してきた自分がこんなにも誰かに執着していることが信じられなかった。
「ちょっと、言わせてよ」
「…?」
自分を見上げる彼女に近づきそっと腕を伸ばしてみれば、記憶以上に小さかった体に軽く目眩を起こしそうになった。
「名前」
「なに?」
「"おかえり"」
ずっと、君に言わせてしまっていたこの一言。待つことがどれだけ寂しいのかなんてあの時の自分は全く気づいていなかったんだ。
"じゃあね "
想像以上に自分に突き刺さっていたこの言葉
「さすけ、」
「うん?」
「た…だいま?」
「なんで疑問系なのさ」
"寂しさ"なんて、彼女に出会わなければ知らない感情のままだったかもしれない。


・・・・・・・・・
◇筑波嶺(つくばね)の嶺(みね)よりおつるみなの川、恋ぞつもりて淵(ふち)となりぬる(陽成院)(美雨様よりリク)
訳:筑波山の頂から流れ落ちる、みなの川―その名のごとく、蜷(みな)が棲むような泥水が積もって、深い淵となったのだ。そのように私の恋心も積もり積もって、淵のように深く淀む思いになってしまった。
…ラスボスAのポジションにいた美雨さんのリクを利緒さん共々先に片付けることにしましたこんにちは一ノ瀬です(ここも謝れ←)美雨さんから和歌のパスが来るのは2回目っすけど…毎回ほんとにラスボスレベルですよねwハードルちょう高ェww(やっぱり謝れw)…くそぅ、負けてられんです…(なぜ火がつくwww)きっとまたどっかで挑戦しそう気がしますw改めまして、みーさん企画参加ありがとうございました!!




!attention!
※名前変換注意※
おまけですー。企画ページの名前変換と違うので「series/番外編」で変換してくださいな。
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