弐拾萬打感謝企画

□自己犠牲
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【自己犠牲:自己)自分自身 犠牲)目的のために大切なものを投げ出すこと】

いくら担任だからって、生徒の全てを知っているわけじゃない
・・・・・・・・・・
「名字、黙ってたって分かんねぇんだぞ」
「…」
職員室と併設されたこの"相談室"。簡易な机と椅子があり、この時期は面談用に使われることが多い。
「何も言わねぇつもりか?」
「…言いたく、ない、です」
進路の相談以外にはもちろん…生徒の"素行を注意する"場合にもこの部屋を使うことはある。
「そうか…」
「…」
…でもまさか、この子が進路相談以外でこの部屋を使うことになるとは微塵にも思っていなかった。目の前で俯いたまま、授業に出なかった理由も今までどこにいたのかも、そして何があったのかも一向に喋ろうとはしない。ただ時折、気持ちを抑えるかのようにぐっと息を詰めるぐらい。
「名字」
「…はい」
ここまで何も言わないのはきっと、自分一人のことじゃないからなんだろう。何かこの子にとって大切な事、…"あの男"の事が絡んでいるからなのだろうか。
「…俺はな、」
「…」
精神的にも成長段階の彼らに、俺たちが横槍を入れるものじゃないとは分かっている。
「お前が、誰に憧れようと、誰と好き合っていようととやかく言うつもりは無え。…だけどな、」
だが今は時期が悪い。将来のこともかかっている今、そちらばかりに気をとられてしまうのはあまり良いとは言えない事でもある。
「お前が振り回されるようだったら、」
「…」
「口を出すことも、厭わねぇんだ」
出来る限り遠まわしに、だけど彼女が気付くように言葉を選んでいるつもりだ。彼女はぐっと唇を噛み締め、泣くのをこらえているようにも見える。
「一応、頭に入れておけよ」
そこまで伝えると彼女は小さくだが一度だけ頷いてくれた。何があったのかは何も分からなかったがこれ以上問い詰めたところで彼女は何も言わないつもりだろう。

たが、静かに立ち上がった彼女が扉に手をかけたとき、「かたくら先生…」と力の無い声が聞こえた。
「なんだ?」
「…、あの」
「ん?」
「…私が、勝手にあこがれてるだけ、なんで…」
「名字…」
「授業…出なくてすみません、でした…」
そう言ってこの部屋を出た彼女。あの子は俺が思っている以上に繊細で傷つきやすい性格だったのかもしれない。

そこから数分後。入れ替わるように姿を見せたのは、自分と同じように彼女を気に掛ける同僚だった。
「何が聞きたい」
「あ?」
「まあ座れよ」
目の前の男は先ほどまで彼女が座っていた椅子に腰掛けると、迷うように口を開く。
「なぁ…」
「…なんだ」
「俺には、アイツに何があったのか聞く権利があると思うか?」
「…。ほう」
「なんだよ、その反応は」
「いや、えらく素直だなと思ってよ」
正直、俺はコイツが生徒に手を出したことすらあまり信じてはいなくて、名字の方が憧れ的な恋愛感情を持っているだけだと思っていた。
「…うるせぇよ」
顔の半分を隠すように俯き、溜息交じりにコイツが吐き出した言葉は俺が持つ生徒への感情とは別の、違う何かを完全に含んでいた。

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◇自己犠牲感の強いヒロインに元親先生が叱るお話(珊瑚様よりリク)
なぁ一ノ瀬…"元親先生が叱る"シーンはどこだ?あ?
…。ごめんなさい珊瑚様まじすみません死んでお詫び…まではしませんけど(←)いやホントすみませんでした(滝汗)まじちょっと時間ください、同じテーマでも一回挑戦したいです頑張ります精進しますorz


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