弐拾萬打感謝企画

□一喜一憂
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【一喜一憂:情勢の変化で喜んだり心配したりすること】


・・・・・・・

「せんせー…」
「…」
ぴこぴこと煩いぐらいの電子音がそこらじゅうで鳴り響く。
「あの、」
「なんだ?」
なんとなく入った店になんとなく設置してあったそこそこ大きなゲームコーナー。プラスチック張りの機械の中には人気のキャラクターがところ狭しと並べられ、無駄に大きなぬいぐるみやら反対にごちゃごちゃした小さなキーホルダーやらがこれまた輝くようにディスプレイされている。
「えと…嫌、なら良いんですけど…」
「言ってみろ」
久しぶりに彼女を連れ出したのだが、"意外"と言うべきなのかなんなのか彼女は目の前現れたゲームコーナーに一瞬だけ目を輝かせたのを俺が見逃すわけがなかった。
「えぇと、ですね」
「…入っても構わねぇぞ?」
「ほんと!」
「いいから、どこが見たいんだ?」
「あのですね、奥のが気になるの!」
やっぱり俺に気を使っていたのか、なかなか口を開こうとしない彼女をほんの少しだけ促してやれば、ようやく安心したのか「あっち側が見たいですっ」と珍しく俺の袖を掴むと先導までしはじめる。
「(すっげぇはしゃいでやんの…)」
いつもなら指先が触れるだけでも意識してしまうのに、袖を掴んだままきょろきょろと目を輝かせる姿が何だか小動物のようで面白い。思わず噴き出しそうになってしまったが、回りの騒がしい電子音とそれどころではない彼女のお陰でそんな自分に気づかれることは心配なさそうだった。
「わぁ!」
「あ?」
ゲームコーナーの中をぐるりと一通り見て回ったあと、突如彼女が一つのケースの前で足を止める。それは予想通りと言うべきなのか、彼女が気に入っているキャラクターの目の前で
「先生っ!見て見て!これ変っ!」
「変!…ってお前…」
"変"呼ばわりされたソイツは…ごろりとオヤジのように横になり、口からはよだれを垂らしながら寝ていると言う、彼女の言うように確かに"変"な姿ではあった。
「やってみてもいいですか?」
「おー。1回で決めろよー」
無茶言わないでくださいよと、言いながらも彼女は慣れた手付きで硬貨を入れていく。ぴこぴこと光り始めたアームは彼女の手元にあるボタンによってするすると箱の中を移動し始めた。
「わ!わ!結構いい感じじゃないですか?!」
「いや、絶対ェ上がんねぇと思うぞコレ」
「いけるはずー!あがってー!」
「すげぇ重そう」
「あっ!あー…」
胴体付近にすっと下りたアームは彼女の期待通り、見事にぬいぐるみを体を持ち上げたがそれは一瞬の出来事で、次の瞬間にはあっさり落下してしまったのだ
「ホラ見ろ」
「あーぁ…最初は持ち上がったのにー…」
「まぁ、」
「ぅ?」
「次でいけるだろうけどな」
落下した場所は最初の地点よりもほんの少しだけ斜めにずれているし、うまく力を加えれば取れなくはないかもしれない。横でいじける彼女を他所に、かしゃりと同じ場所に硬貨を入れると見様見真似でボタンを操作し始めた。
「ここ、だな」
「えー…先生、それじゃ掴めなくないですか?」
「別に掴まねェからいいんだよ」
「へ?」
まぁ見てろって、と横で見守る彼女に声をかけると、再び下降しはじめたアームに二人揃って視線を向けた。
「お、結構いいんじゃね?」
「ぇ、わあ!」
「完璧だろうが」
「きゃー!先生っすごいすごいっ!」
更に派手になった電子音と、同時にぼすんと落ちてきた…ぶっさいくなクマのぬいぐるみ。先ほど彼女が掴んだ胴体の辺りをアームの力でほんの少しだけ押し込んでやれば、あとはもう計算どおりの流れだった。
「ほら、良かったな」
「先生ありがとー!!」
「…お前、大声で"先生"って連呼すんなっての」
「ありがとー!元親サンっ!」
「…あーハイハイ」
両手でくまを抱きかかえてきゃっきゃとはしゃぐ彼女の姿は、こう言ってはなんだけど…あまりにも子どもらしくてついつい笑ってしまいそうになる。それは、いつも自分に合わせようと必死背伸びをする彼女が自然に見せてくれた笑顔だった。

・・・・・・・
◇二人で何かに集中するお話。(つぐみ様よりリク)
余談だけど…この企画の四字語募集で一番笑ったのはつぐみさんから来た「炊事洗濯」って案でしたwwwゲーセンだいすき一ノ瀬です。UFOキャッチャーはね、ちゃんと中身(商品)のモトが取れるぐらいに調整されているんですよ、2回で取れるなんてよっぽどの事が無い限りありませんよ(元ゲーセン店員が語りましたw←)ま、そこは元親先生だからってことでカバーしてください(ぁ)改めましてつぐみさま、企画参加ありがとうございました!

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