オリジナル

□本編
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一方ここはトルナスタ国城下町にある薬屋の家。
その庭で、まだ若い男が薬草に水をやっていた。
「いい天気だな〜・・」
青空の下、うんと伸びをして呟く。
「今日はまた、新しい薬草でも採りに行こうかな・・」
と、そこに。
「あ、いたいた。ミク君!」
後ろから声をかけられて、ミクは振り返る。
「あ。王子だ。」
「何その言い方。まあいいや、ちょっとかくまってよ。」
かくまうとは一言も言っていないのに、勝手に庭に入り込み、しかも家の扉を開けるジオナ。
いつもの事となると、もう止める気も起きない。
「また追いかけられてるんですか?」
ミクはジオナを家に入れながら尋ねる。
「追いかけられてるって言ったら語弊があるな。僕はね、捕らえられかけてるの。」
「はぁ・・?」
「僕は自由に生きたい小鳥さんなんだよ。アルクはそれを邪魔してるのさ。」
「カッコイイ言い方してもダメですよ。追われてるんです、脱走するから。」
だいたい王子なのに、何が「小鳥さん」なんだろう。
ミクの呆れた声に、王子は笑うだけ。
「脱走は悪いことじゃないよ。好奇心旺盛なのは良い事だとは思わないかい?」
「全く良くありませんよ、王子。」
表の玄関からいつのまにか入ってきていたアルクが、ジオナの襟首をしっかりと掴む。
「あ、今日も早い」
笑いながら言うジオナに、
「毎日ここに逃げてるじゃないですか。」
とアルクのツッコミ。
それからアルクはミクの方を向き、頭を下げる。
「すみません、王子がいつも迷惑かけて。」
「いえいえ、困ってませんから。」
これもいつものやりとりである。
ジオナは少しつまらなそうな顔をして、
「お茶くらい飲んで行きたいな。」
「いい加減にしてください王子。ミクさんにこれ以上迷惑かけてどうするんですか」
「別に構いませんよ?」
これもいつも通り。

結局ジオナとアルクは、ミクの家でお茶をごちそうされる事になった。
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