雨音が聞こえる

□二
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今日は半日で学校切り上げて早帰りすることになった。



部活はもちろん無しで、秋大会近い身としてはちょっとフクザツな気分だ。





『んー…今日はちょっと長めに練習すっかな〜〜』



バットケースを肩にかけなおしながらひとりごちる。


バッティング練習した後おっちゃんにピッチング付き合ってもらおうか





体を反転してバッティング場への近道にむかった。










商店街の近くにさしかかった時だ。

商店街からの買い物がえりだろうおばさんたちが何か話しあいながら歩いてきた。




「最近ぶっそうよね〜」


「特に並中が中心らしいのよ。
あ、ほら、さっき商店街でケンカしてた子も…」


「まぁそういえば並中生ね!
あんな町中で花火で遊ぶなんて危ないわよねぇ…」



『!』





花火に並中生って……獄寺?






半ば以上確信してあたしは今現在ケンカが起こってるらしい商店街に足をむけた。





獄寺はケンカ強いからだいじょーぶだと思うんだけど 一応、ね。























ケンカの相手だろう男子と対峙するのは、さっき見たときよりもさらに青い顔したツナ。

その足元には――血だらけで倒れる獄寺がいた。



相手の男子も十分傷だらけだけど、ケンカでこんなにやっていいもんなの?




―――っ!





フードの彼がツナに攻撃した瞬間、とっさに体が動いて
ツナと一緒にスライディングした。







すぐに体勢立て直してツナがいたとこを確認すれば、そこにはたくさんの針が突き立ってる。


…冷たい怒りが心に満ちた。



『すべりこみセーフってとこだね』


「弥白!」




どうしてここに、と言いたげなツナに説明する。



『結局、学校 半日で終わってさ。

通りがかったら並中生がケンカしてるってゆーでしょ?
獄寺かと思ってさ』




あぶなそうだったら加勢するか〜って軽い気持ちできたんだけど…






「そーだ!獄寺君が!!」



『うん わかってる…』




きつく目を閉じた獄寺の体に 今見たのと同じ針がささってるのをみとめる。







あたしが助けなかったら、ツナも獄寺と同じことになってたんだよね?




『これは―――』




ざわざわと落ち着かない、だけど芯の冷えた心をそのまま視線にこめて、
あたしは 親友2人に攻撃した彼を見据えた。




『おだやかじゃあないね』




感情の薄いうつろな目の奥には、だけどあたしを邪魔だと思う気持ちがはっきりと見えていた。






「邪魔だ」



彼の体に力がはいる。

同時に、護身用にと持ってた"あたしのバット"を振り抜く。









固い感触は一瞬のこと。





「!」



彼の武器であるヨーヨーは2つになってあたしたちとの間にころがった。



「切ったー!!
つーか いつから弥白のバット常備〜〜!?」



いっそ清々しいくらいにツナが驚いてくれてるけど、今 説明してる余裕はない。






刀を構えてじっと睨んでると、彼はおもむろに足元に落ちてたメガネをかけなおして言った。




「そうか…おまえは並盛中学2-A 出席番号15番 山本 弥白…」



『だったら何?』




記憶をあさっても彼との接点はみつからない。



…警戒レベルを少し上げようか。













彼とあたしとのにらみ合いに割りこんだのは、近所の人がおまわりさんを呼ぶ声。




「………おまえは犬の獲物……もめるのめんどい………」



…けん?




ボソボソとなぞのセリフを残して彼は去っていった。







その背中が見えなくなってからツナとあたしは緊張を解いた。



「はっ 獄寺君 大丈夫!?」



『しっかりして!獄寺!?』




声をかけてもうんともすんとも言わない。






…いくらマネージャーだからって、こんな大ケガの手当てなんてしたことないよ…っ





ツナにもどうにもできなくて
治療させないと、って気ばかり焦るあたしたちに声をかけたのは





「どーしたんだい?弥白ちゃん
そんなに困った顔をして

せっかくの可愛い子ちゃんなんだから笑ってないと損だぜ?」





どこからかあらわれたシャマルさんだった。












口調はどこまでもいつも通りだったけど、倒れる獄寺を見る目つきはまちがいなく医者の目だった







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