通り雨
□雨の中で
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ルーンファクトリー4(3DSゲーム)より
ダグ×フレイ
自己解釈の嵐・中途半端なネタバレ注意報発令ー
俺にはやるべき事がある。
だから、癒されつつある傷をわざわざえぐっては やるべきことを心に刻んできたし、共感する心に知らない振りをして、一歩引いたとこにいんのを気付かれないようにしながら周囲の人間に接してきた。
一度気を許すことを知ってしまえば俺はきっと全てを忘れて、優しすぎるこの町に溶け込んでしまうだろう。
だから、たとえ相手が記憶喪失で何もかも忘れている彼女でも、心を許すわけにはいかなかった。
俺に向けられる彼女からの好意を笑顔をひたすら受け流して他の奴と同じように対応して。
けれども過ぎ行く日々に比例して 段々と彼女への扱いが変わっていくのが自分でもわかっていた。
「そうだ。ねえねえダグ、今日こそ一緒に出かけようよ!」
「あーごめんな 店番で忙しいからまた今度ナ!」
それは、最後の一線。
これを越えたら俺が今まで流れに抗って研ぎ澄ませてきた"武器"が意味をなさなくなる一線。
俺が行かなくたって彼女が真実を手にしちまうだろうことぐらい、わかってる。
わかっていても、手を貸すわけにはいかなかった。
でも、笑っちまうよな。そう思ってんのにも関わらず気がつけば心配になってダンジョン行ってお節介焼いてんだ。
手を貸さないんじゃなかったのかよ、俺。
雨が、強い。
彼女が来てから穏やかな気候ばかり続いていたのに、夜になって急に叩きつけるような雨が降り出した。
…なんとなく 彼女が泣いているような気がした。
…まただ。
気がつけば、彼女を探してる俺がいる。
雨に肩を叩かれながら引き付けられるようにしてたどり着いたのは、この国の「カミサマ」がいる城の前。
俺がこの町で最も嫌悪する場所で、
彼女がこの町の"姫"として暮らす場所でもあった。
開けっ放しの城の扉の中からは、雨音に紛れて彼女の悲痛な声が聞こえてくる。
その原因が俺にはわかっていた。
だから、よくこれまでアイツはそれを彼女に気取られずにいられたなとちょっと感心する。
「寿命、か…」
それにしても。
俺にとっては喜ぶべき事なのに、この声を聞いているとどうしてこんなにも胸が苦しくなる?
やがて、今にも消えそうなくらい憔悴しきった彼女がフラフラと城から出てきた。
扉のすぐ横に俺はいたのに、彼女は気付かず通りすぎ 雨に打たれている。
…俺が黙っていられたのはそこまでだった。
「だから言ったロ
あまリ入れ込むなって」
「…ダグ」
俺の名を呼ぶ声はか弱く、いつもとの差異に無償に心が締め付けられた。
……待て。違う、俺はそんなの感じて無い。感情移入はしないって決めただろ?
「どうせ死ぬんだかラ さっさと最後の奴を解放して楽にしてやればいいじゃねーカ
アイツは元からそういう運命だったんダよ」
「…………」
一瞬消えかけたアイツへの嫌悪を引っ張り出して並べた言葉はどうして、言った自分でも驚くぐらいに刺々しい。
顔を伏せて沈黙する彼女の前髪から落ちる水滴が涙のように見えた。
次第にそんな彼女を見ていられなくなって、俺が何かを口走ろうとした、その時。
「…どうしてもあきらめきれないの!!」
「っ!?」
華奢な体のどこから出たのかわからない大声が俺を真っ向から叩く。
その衝撃で正気に戻った俺は愕然とした。
…俺は、今、何を言おうとした!?
彼女は雨の中、痛みをこらえるような顔をして俺を強く睨んでいる。
少し充血した瞳と目が合う。と、感じたことの無い 刺すような痛みが胸にはしった……だから、違う、俺はそんなの感じてない!!
「クソッ そんなに言うなら好きにしロ!」
不甲斐ない自分への怒り
知らないままでいてくれない彼女への怒り
そのどちらか…あるいは両方を込めてそれだけ吐き捨てると、俺はその場から走り去った。
雨に打たれて何かから逃げるように走りながら、思う。
なんで俺はあそこに行ったんだろうか、と。
アイツに明らかに入れ込んでいる彼女の元へ行けば、こうなることぐらい予想できたはずなのに。
いくら考えても 答えは出なかった。
fin.