通り雨

□その眼
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「貴女も一緒に、行きませんか?」






差し伸べられたその手を、私ははらった。



勝手に改造されたこの体はたったそれだけの行為にも力を込めたらしく、私の想像した以上に彼は痛みを感じたようだった。




「、なぜですか?
貴女をこんな場所に連れてきて勝手に体をいじくってきたマフィアに、
それを知っていて無視を決め込んだマフィアに、

復讐したいとは思わないのですか?」




"六"の字が浮かぶ赤目を揺らし、言う。



ここで改造されて力―もしかしたら人外の力―を手に入れた私たちが手を組めば、マフィアの1つ2つくらいは簡単に潰せるだろう。






けれど私は知っていた。






"ボンゴレファミリー"というマフィアがこの世に存在していることを。









ボンゴレは超超巨大マフィア。



組織は大きくなれば大きくなるほどつつける弱点が多くなるとよく言うけれど、もしそれが本当だったならこの世にボンゴレは存在しないはずなのだ。


マフィア社会には直接介入してくる強敵がたくさんいるはずで、それでも不動のトップに君臨し続けているボンゴレは生半可な組織じゃない。



そんな組織を、私のたった一回の行為で心が揺れてしまうような少年が潰せるはずがない。


そんな男に着いていくほど、私は軽い女でもないから。
感情論で動けるほど、優しくもないから。







私より5つも下の少年にそんな現実を伝えて諦められてもつまらないし、ただ『復讐なんて嫌いだ。私は"普通"になりたい』とだけ言った。




本音であり、本音ではない言葉。





人の裏を嗅いで生きてきた彼からすればその言葉は信じられないようで、とたん厳しくなる目付き。




睨んでくる赤と青の瞳を見て私はただ笑った。













ほら、すぐ感情が表に出る。









勧誘を諦めたらしい彼は、こちらに一瞥すらくれず周りを見渡す。



今度彼が目をつけたのはボサボサの金髪少年と、うつろな目の眼鏡少年の2人組。




そっちに歩いていく稲妻パイナップルを見、私は開いているドアから外の世界に踏み出した。








―貴女もいずれ―



骸の小さな決意など知らずに。





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