雨音が聞こえる

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ディーノさんと一緒に邸の中を見てまわる。



途中、マフィアごっこに参加してるだけあってエアガンとかがたくさん置いてあるとこに着いたり
なぜか急いでそれを隠そうとするディーノさんと部下の人たちに笑ったりとあたしなりに探検を楽しんでると、




『……ん?』



廊下のカベに見覚えのあるものが見えた気がした。



足を止め 何歩かさがって
やがてあらわれたのは髪型がツナとよく似た男の人の絵だった。






髪の色はちがうけど、この人ツナに似てるな〜〜っ


名前は…


『…ヴ…じゃなくて…ボンゴラ…T?』



「お、その絵に興味があるのか?」



ディーノさんがどこか感心した様子でそう聞いてきたからうなずくと、説明をはじめてくれた。




「その絵はボンゴレファミリーの創立者、T世(プリーモ)の肖像画…を模写したもんだ

これはキャバッローネとボンゴレの同盟の証でな
ボンゴレ本部の方には同じようにうちの初代の絵が飾られてるんだぜ」



『へ〜〜』




つまりはこの人がマフィアごっこの始まりってことなのか〜





まじまじと絵の中の彼を見つめると、かなしそうでいて決意に満ちた目で見返される。



最初はツナと似てるって思って立ち止まったけど、こうしてじっくり見るとあんま似てないや。


似てるのは…あったかい雰囲気ぐらい?






見終わって 隣に立つディーノさんに声をかける。





『そろそろいきましょーか』



「じゃあ次は…美術品とかはつまんねーだろうし…野球でも観にいってみっか」



『こっちにも野球ってあるんすね〜』



「日本と比べるとそこまで盛んじゃないけどな

ロマーリオ!車をまわしてくれ!」



「そうなると思ってもう連絡いれといたぜ」



「おっ サンキューな」



『おお…』




打てば響くディーノさんたちの関係に素直に感動する。

長い間 よろこびや悲しみをいっしょに乗り越えてきたんだろう絆がそこにはあった。




『……ツナもこんなボスになんのかな』



「ん?なんか言ったか?」



『ハハッ なんでもないっす

あ、ディーノさんの応援してるチームってあるんすか?』



「んー…オレは××××かな」



『ハハ…やっぱイタリア語ですよね』



「あ!すまねぇ!」








それからディーノさんと野球観戦して
ちょっと遅めの昼ご飯を食べて、まったりしたらいつの間にかもう帰る時間。






急に仕事がはいって日本まで送りにいけないのをめちゃくちゃ謝るディーノさんに苦笑い。




「本っ当ごめんな!」



『大丈夫ですよ
ビューンといってちょっと電車乗ればすぐですし』



「…何かあったらこの番号に電話してくれ!
少なくとも今日いっぱいならつながるはずだ」



『や、でも』



「もしものために、な!」




心配しすぎですよって断ろうと思ったけど、有無を言わせない笑顔でずいっと押しつけられたからおとなしく受けとることにした。


サイフに紙をはさむのを見るディーノさんが小さくつぶやく。




「………こんな職なんだから心配しすぎて悪いことはないよな…」



『?』



「はは、なんでもねーよ。あ、コレ さっきの仕返しな」



『ハハハハッ』









《〜〜〜〜〜〜》



「お、弥白。もう飛行機に乗る時間だぜ」



次々放送が流れる中、あたしの乗る便のやつだけを聞き分けたディーノさんはさすがだと思った。







あらためて頭を下げる。



『今日はありがとうございました!
ディーノさんのおかげでめちゃくちゃ楽しかったです』



「お礼されるほどのことはしてないが…どういたしまして
またイタリアに遊びにきたときは今日まわりきれなかったとこ連れてってやるからな」



『ハハッ期待してます
部下のみなさんもありがとうございました』



ディーノさんのうしろにひかえる部下の人たちはなぜか面食らったようなそぶりを見せたあと、軽く手をふった。



『それじゃ、また!』


「おう またな!」





ディーノさんたちに手をふりつつあたしはゲートへ向かった。

















「行っちまったな…」



「ああ」




しばらく感慨にふけっていたディーノは、先ほどまでのどこか気を抜いたものとは真逆の雰囲気をまとってふりかえり、歩きだす。



「…………」



それに無言で着いていく部下達。



滑らかに目前に止まったタクシーに乗り込んだディーノは、運転手に目的地を告げる代わりに質問を投げかけた。




「で、復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄から脱獄したっつー命知らずな奴らの正体は掴めたか?


ロマーリオ」



返事のかわりに何枚かの資料を渡される。

ディーノがそれに目を通したのを確認して、車を運転しつつロマーリオは言った。



「脱獄者は合計8名
うち、脱獄の主犯格は別紙のその3名で 左から、柿本千種、六道骸、城島犬」


「全体的に年齢層が低いのがひっかかるな……脱獄してからの動きは?」



「それが……」




続く言葉にディーノは大きな反応をかえす。



この脱獄者達が何をするか 彼には1つだけ心あたりがあった。








(ツナ、弥白…!)




彼らの目の前で、飛び立ったばかりの飛行機がだんだん遠くなっていった――









end.
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