雨音が聞こえる

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祭りばやしが聞こえる中、せっせとバナナにチョコを塗るあたし。

浴衣のそでがチョコの中に入りそーになって、浴衣を着てきたことをちょっとだけ後悔した。





早くしろ、と差しだされた獄寺の手に完成したばかりのチョコバナナをわたす。


『ハハ、まだこんなにあんのかー…』



祭がはじまって早くも2時間。


バナナが入ったダンボール箱の半分以上が、まだ手もつけられてない状態で。


思わず苦笑いがうかんだ。









七夕の交流会の時にあたしが壊しちゃった公民館のカベの修理費をはらうため
こうして獄寺(リボーンくんに手を貸せって頼まれたらしい)と一緒にチョコバナナの屋台をひらいたんだ。

…けど、売り上げがなかなか思ったようにのびていかなくて。


いくら売り上げの山が祭の中ごろからとはいえ、このペースじゃけっこうキツい。



売り上げと時間を計算してた獄寺がその結果に思いっきり顔をしかめたとき。




「チョコバナナ一本ください」



『あいよ!
うちは頼まれてからフランス製のチョコを塗るからね!』



「ベルギー製つってんだろ!」




注文の声に返事をして、
屋台ひらいてからもう何度目かになるやりとりを獄寺と交わしつつチョコを塗る。




『…ん?』



あれ、さっきの声って……
もしかして今来てるお客さんってツナ?





あ、獄寺にチョコバナナ持ってかれた。




「おらよ」



ちょっと気になってふりかえって見てみると



「獄寺君と弥白ーー!!!」



驚いて目をむくツナがそこにいた。



ん、やっぱツナだね!




「じゅ、10代目〜!!」



『やっほー ツナ』





「おどかしっこなしですよ」


「それはこっちのセリフだよ〜っ!
何してんの!?」



甚平姿のリボーンくんがわかりやすくツナに状況を教えていく。


うわ、それ聞いて獄寺の眉間のしわがまた増えてきた。



「ったく、ムカつきますよね。山本のせいなのに」



『いや〜ゴメン』




イヤならやんなくていいって付け足したけど、ツナはそれでも一緒に屋台をやってくれることになった。











人の流れの中に消えてくいーピンを見送ってると、となりの屋台のおじさんが話しかけてきた。




「そろそろお前らもショバ代用意しとけよ〜」



『了解!おっちゃん、ありがとねーっ』



「お互い様でい!」



「え、ショバ代!?」




お金を用意しだしたあたしにツナが疑問を投げかける。



その疑問に答えをかえしたのは獄寺のほうが早かった。




「ここらを取り締まってる連中に金を払うのが並盛の伝統らしいっス

ここはスジを通して払うつもりっス」




…にしても払う額がけっこう大きい。



なんたって



「5万」



だもんな〜〜


場合によっちゃ うちの店の1日の売り上げより高いか、も………って、あれ?



「ヒバリさんー!!?」



「てめー何しに来やがった!」




やっば
一瞬気づかなかった!




黙ってその場に立つヒバリの視線の先にあるのはあたしがもってる封筒。



この中にあるのは払う予定のショバ代で――




『まさか』



「ショバ代って風紀委員にーー!?」



「活動費だよ」




そうだ、並中だけじゃなくこの並盛全体を風紀委員会が握ってるんだった。



話で聞いてなんとなく知ってる気になってたけど、思ったよりもずっと深いとこまで握られてたんだね。




「払えないなら――屋台をつぶす」



ホントにつぶされてる屋台もあって、そんなの見たら払わないなんて言えるわけがない。




「たしかに」




ちゃんと封筒の中身を確認したあとヒバリは帰っていった。






ん、活動費って何に使うのかな?









そうそう、後でツナが浴衣ほめてくれたのがなんだかうれしかった。








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