雨音が聞こえる

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「冷たーい!」


「ぇ、何この虫!?誰か取ってっ!!」









その虫を取ってプールの柵のむこうに投げてやる。






ありがとう…!って心底言ってるその子にあたしは笑いかえして、デッキブラシで床をこすった。
















7月にはいってどんどん暑くなり、夏本番が近づいてきた今日。







内藤がじゃんけんに負けたから、うちのクラスが2年生恒例のプール掃除をすることになった。









1年の間使われてなかったプールはどろどろで。

はだしの足につたわる感触に鳥肌がたつ。


















それでもなんだかんだいってプールはキレーになってきた。


しつこい汚れや角のとこにはけっこう残っていたりするものの、そーゆーとこにはホースを持ちだしてつまみ、いきおいよく出る水の力にまかせてちょっと楽をしてみる。








ホースは同じことをやりたい人にすぐ持っていかれた。













そろそろ掃除もおわるかなってとこで、男子のほうの体育のセンセー エノモトが大声で言った。




「いいか おまえら!
明日はプール開きだ!!

中2にもなって15m泳げない奴は女子にまざってバタ足練習だからな」



「えぇ!?」


「そんな!」





男子の何人かは本気でやめてって顔をしてる。


とくに 去年エノモト先生が担当でバタ足練習させられたって噂の男子はめちゃくちゃイヤそう。












…そして、本気でイヤがってる人の中には





『ツナ、泳げなかったっしょ』



ツナもまざってるんだ。



「いやっ、えと…っ」




言いたくないのか彼は口ごもって全力で目をそらす。



ツナが考えをかくすのがあんまりにも苦手すぎてちょっと笑えた。




『やっぱりね
市民プールで練習しよーよ。つきあっからさ』




聞いた話じゃハルを助けるときに泳いでたんだそーだ。


だから全く泳げないわけじゃないはず。





『泳ぐなんてコツさえつかめばなんとかなるって!
人間なんて浮くよーにできてんだから』


「あっありがとー弥白!!」






「家庭教師としても助かるぞ」


『お』


「おまえっ」



いつの間にいたのか、リボーンくんがプールに来てた。


ちっさな足で歩いてくるのは大変そうだと こっちから距離をつめて抱き上げてやる。



…おぉ、軽っ




『ハハハ また来たんだリボーンくん』


「ちょっ、弥白っ!!
みんなに見つかっちゃうって!!」




高い高いと上にあげてやると、リボーンくんは口もとをちょこっと笑わせた。



あまり大きな反応をしないリボーンくんがこーして見てすぐわかる表情すんのはめずらしいな〜




あたしもうれしくなって 止めるツナにかまわず(ツナごめん、)高い高いをつづけてると、





「コラ山本ォ!何をつれてきとるかーっ!!」


「ひいっ みつかったー!」


やっぱ見つかった。

ん、こーゆーときはあわてると逆効果だって聞くし、



『腹話術人形っス』


「ちゃおっス」


「んな!!」



できるだけさりげなくリボーンくんを肩にのせて先生に笑いかけた。

リボーンくんもノってくれたからもっとそれっぽくなる。



「むー…?……」


プールサイドからおりてきてリボーンくんを観察してたセンセー。




やがてあきれたように息をついた。



「ったく、くだらん。しまっとけ」



『了解っス 隊長!』



「いいや、教官と呼べ」



『これは失礼しましたっ』





あたしとセンセーとのやりとりでまわりにいる人たちが どっと笑いだす。





腹話術をやれって言ってくる人たちにこたえつつ、あぜんとしてたツナと学校帰りに泳ぎの練習をしようって約束した。






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