雨音が聞こえる

□32
1ページ/3ページ




小さいころの夢を班ごとにまとめて用紙に書いて提出。

…それが、宿題なんだけど、さ。


「あ゙〜〜」


「わかんねーっ」


『…えーっと?』


「なにこれ…」


おせじにも成績がいいとは言えない人たちがピンポイントで集まってるこの班に、「資料をまとめる」なんて器用なことをできる人なんていない。



いい案が浮かばず意味もなくうなったりしてたらいつの間にか昼になっていた。








「なぁなぁ山本〜?」



『なに?』




糖分補給でパフェをつついてる班長があたしを見た。(今ファミレスにいるんだー)


死んだ魚のような彼の目の下には最初は無かったクマがうきでている。

しかも頬もげっそりやせてるから、この顔でその辺をふらついたら幽霊とまちがわれるかもしれない。



「あのよー」


『ん』



「ちょっくら他の班の偵察してきてくんね?」


『へ?』









なんでも他の班でやってる方法をパク…じゃなくて参考にしたいんだそうだ。

たしかにこーしてグダグダしてても仕方ないし、だれも課題のまとめなんてできないし。













そんなわけで、さっそくあたしは友達2人―ツナと京子―のいる班の偵察をすることに。



ん、ツナたちの小さいころの夢が何なのかも気になってたからちょうどいいや!




あしどり軽く沢田家へむかった。












『よっ 宿題すすんでる?』


「弥白!
どうしてうちに!?」




驚くツナたちに同じ班の人たちに偵察してこいって言われたって説明すると苦笑いがかえってきた。

実はうちの班 最初っからヤバいんじゃないかって言われてたんだよね〜






「こんなヒマあんなら外の敵倒してこい!」



ツナたちと話しててふいに聞こえた声。

獄寺だと思ったときには、



「野球バカが!」



『何だ獄寺!来てたんだ』



反射的に返事をしてた。



でも、あれ?なんかちっちゃいし声高くない?

と考えたとき、ナイスタイミングでツナからフォローがはいる。



「ちっちがうよ!獄寺君のいとこだよ。ちっさいでしょっ」


『ん!』



やっぱちがうのか!



『ハハハ よくみりゃそーだね
なんか獄寺な気がしたんだよなー』


「おっ おいっ!」


「ちょっ弥白!」



抱き上げれば悪態づきながらじたばた暴れる。

見た目はともかく、いとこ同士ここまで性格が似てるのも珍しいよな〜


この子が10年前の獄寺ですって言われてもフツーに信じられそう。




そうやってしばらく観察してると、ランボが部屋に入ってきた。

ツナ、京子、あたし、と 近い順に見てったランボは、抱き上げられてるこの子を見つけるやニヤニヤ笑いだした。



「あららのら?どこのチビ助かしら?」


「コラ ランボ!でてくんなって言っただろ!」


『まーまー もしかしたらこの2人 友達になれるかもしんないよ?』



獄寺はちっちゃい子があんま好きじゃないからケンカばっかしてるけど、この子はランボとだいたい同じぐらいの年だよね。

いくら性格そっくりでも年のちがいってけっこうあるはず。





ランボが来てからずっと動かないのが気になるけど、ま、大丈夫っしょ。




そっとランボの前におろしてやる。




「ランボさんの子分希望かしら?…にしてはダサイ髪型!」


「…………」


「あららのら
無視してくれちゃって。オレっちを怒らすとこわいんよ」


「…………」



さっきまでの悪態の嵐はなんだったのか、ランボの前ではすごくおとなしい。


人見知りするタイプなのかと感心していたら、



「つきあってるヒマは ねー」



なにがどーなったのか彼はランボを蹴りとばした。

蹴られて泣くランボにかまわず舌うちする様子に 獄寺がだぶって見える。




そっくりすぎるぐらいそっくりだよなー




ランボを泣き止まさせようとがんばるツナに加勢しようと足を踏みだす。



と、



「いつの間に!」


さすがに見過ごせない状況が視界のはしに入ってきた。


今まで背中ごしで見えてなかったけど、この子獄寺みたくタバコくわえてんじゃん!




針路変更。



『コラ 獄寺みたいになっちゃうぞ』


「なにしやがる!」



片手でその子を持ち上げ、タバコを没収させてもらった。

喫煙は20歳から!とは言わないけど、せめてもーちょっと体ができてからにしないと。



絶対に手がとどかないようシンクの上に取ったタバコを置いた。



「くっ…!
野球バカ!!てめーあいつらがみえねーのかよっ」



野球バカって獄寺に聞いたのかな?と思いつつ指さされた先を見る。
そこには普通の天井。あるのはちいさなシミぐらいで。



『?』



顔をもどして首をかしげてみせると、青筋たてて(本当そっくり!)足をむけてきた。




『ちっさい足だね〜』


「何言ってやが……足ちかっ!!!」



足を見ておどろいたかと思うと、今度は自分のほっぺに手をやる。

ほっぺをプニプニやるたび、あぜんとしたチビ助(今つけた)の顔色がわるくなっていく。



「ちぢんでるー!!!」



そして、ちいさな体のどこから出てるのか不思議になるほどの声で叫んだ。



『?』


「しかも何だ…このプニプニの体型は…」


「あのっ、おっ落ちつこうよ。ね!?」


「ふわぁっ」




小刻みにふるえてたチビ助は白目をむいて泡をふく。





…よくわからないけどこれは起こしたほーがいいかな?







とりあえず、彼を起こすべく抱き上げてる腕をゆらした。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ