雨音が聞こえる

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乾杯の合図でもちあげたグラスの中身は、たぶんシャンパン。


炭酸ジュースがこんなところで出されるわけないし。





飲むフリだけしてグラスをテーブルにもどして見やった先には

白スーツのリボーンくんと、
純白のドレスをまとって しあわせの絶頂だって顔したビアンキさんがいる。













今日は2人の結婚式だ。



















将来の夢は?




そう聞かれれば、こたえは今も昔もただ1つ。


プロ野球選手になること。






フツーの女の子みたいに
花屋になりたい
だとか
お嫁さんになりたいだとかって1度も思ったことがなかった。



きっとこの先もないんだろう。

今さら考え方なんて変わんないしさ。







だから。
こうして結婚式を開いてるビアンキさんや、
それを心から「いいな」って言える京子とハルがちょっとうらやましかったり。




みんな、あたしじゃわかんない気持ちを知ってる。











…ま、うらやましがったってどうにもならないけどね。












リボーンくんとビアンキさんの結婚式は何事もなくすすんでる。






「……お願いだから変なことすんなよ…」


「…あーもう!アイツ早くもどってこいよ……」




ツナとディーノさんが心なしか殺気立ってる以外は。




『ツナにディーノさん、なにかあったんスか?』


「ひぃ!…って 弥白!!」


「い、いや、ちょっとリボーンへの結婚祝い何にするか考えててな。な!ツナ!」



「は、ハイ!」



『あ〜 たしかにいきなりだったっスからね』




当日に招待されてもこんなにいっぱい人が来るとこに あの2人の人気がうかがえた。









……にしても、あれってだいじょーぶなのかな。




『あの、』


「「?」」


『リボーンくんって――』





まで言った瞬間、バッと音をたててふりむく2人。





その先には ビアンキさんにしきりとシャンパンをうながされてるリボーンくんがいる。





『シャンパン飲めます?』





もしかして飲めない?










バチッ!!



「あ!」


「いかん!」



電気がショートしたような音がひびき、ツナとディーノさんは弾かれるようにリボーンくんとビアンキさんのとこへ走っていった。







「しゃ…しゃなななななななななななななななななななな!!」




案の定、リボーンくんは酒には弱いみたいだ。










『…?』




ふと におってきた酒のにおい。
だれがいるのか見るためにイスをうしろにひいたら、


「ぐはっ!」

そのだれかがイスとぶつかった。







『…あ、シャマルさん。大丈夫スか?』



「いててて……やっぱ不意うちなんて考えるんじゃなかったぜ…」




腹と、思いっきりしりもちついたらしい腰をさすって立ちあがる。

いつもの白衣を着てないから 一瞬だれだかわかんなかった。




「よぉ、ひさしぶりだな弥白ちゃん。花見以来か?」


『そーっすね〜。
にしてもシャマルさん、結構飲んでますね』



しゃっきりしたスーツ姿なのに酒のにおいがプンプンする。

酔ってる感じはないから まだまだ許容範囲なんだろうけど。



「こんぐらいいつもの量さ」


『おぉ…』



思わず拍手。抱きつかれそうになったから避けた。



「相変わらずつれないねー…
ハグなんてあいさつと変わんねーんだぞー」



と言って、も1回きたからまた避ける。



『いや〜 あたしは純日本人なんでカンベンしてください』



「ちぇ


………で、さ。弥白ちゃんは今日の式、どう思うよ」






子どもみたいに口をとがらせて言った後、一転、マジメな顔になるシャマルさん。




どうって聞かれても、



『めでたいな〜って思いますけど…。
あ、それと。リボーンくんがらしくないなって』




あのリボーンくんが他の人のフォローがないといけないほど緊張してるところなんてはじめて見た。





「へー…らしくない、か……ありがとな 弥白ちゃん!」





この礼はまた今度!って言って会場から出ていくシャマルさんを見送って、
騒ぎのおさまりつつある式を見直した。

















(ったくリボーンの奴…弥白ちゃんにまで見抜かれかけてんじゃねーか)




ため息をついて、エンジンをかける。





焼け石に水だとはわかっていたが、動かずにはいられないのである。







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