雨音が聞こえる

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野球をやる上で大事なのって、やっぱ 努力をしつづけることなんだと思う。




一時期それを見失って、目の前の結果だけよければいい なんて思ってたから、
骨折してるからしばらく野球をしないように って医者に言われたとき 自殺しよーとするくらいショックをうけたんだ。





結果をのこせないあたしは役たたずなんだ、って。








あのときのなやみ方は尋常じゃなかった。


中学でなやむ全部をあのみじかい間につめこんだ、そんな感じ。


今思い出すと なんでって思うくらいちっさなことまでなやんでてちょっとはずかしかったりする。




でも








カキン!




打ったボールはホームラン板のど真ん中にあたって落ちていった。





『…だから今のあたしがいるんだよな〜』




あのスランプがなかったら ツナたちと友達になることも、
こーして130km/hの球をホームランにできるようになることもなかったんだし。



まぁ、さすがに2度目のスランプはいただけないから ちゃんとがんばんなきゃだね




飛んできたボールの軌道にあわせてあたしはバットを振った。
















『おっちゃん、今朝はこれくらいにしとくわ』



今日は走り込みもやりたいから いつもよりちょっと早めにきりあげた。



「なんだよ もっと打ってきゃいーじゃねーか。
どーせ学校じゃ寝てんだろ?」



『ちぇ、言ってくれんなー』



いつもの。
そー言ってお金をわたすと、よく冷えたコーヒー牛乳が言葉と同時にわたされた。



「しかしたいしたもんだな
中学女子のくせして130km/hの球、ガンガン ネットまで運んじまってさあ」



『ハハハッ
まだまだだって』



ストローをパックにさしながらつづける。



『代打なんだし、変化しない球ぐらい全部ねらった所に打てないとさ』



「へっ とんでもねーことを簡単に言ってのけやがって」



『や、そーゆーおっちゃんだって高校時代 ガンガン ホームランをとばしまくる選手だったーって話じゃんか』



するとおっちゃんはちょっと驚いてから 「ああ、剛の奴から聞いたのか…」 と言って笑った。



「ま、あんときゃ運が良かったってのも結構あったんだがな」




運だけの人が140km/hの球を一球のこらず打てるわけないって。

こないだたまたま見ちゃったそのことは言わず ちがうことを口にだす。




『ハハッ 運だけでホームラン打てんならだれも練習なんてしないっしょ』



コーヒー牛乳を一口飲んで おっちゃんに笑いかける。



『あたし、おっちゃんみたくガンガン打てる選手になりたいんだ』









「そのためにもトレーニングをするぞ」



『?
…お、リボーンくんじゃん』




ふりかえれば、リボーンくんが野球する気まんまんのカッコをしてイスに座ってた。






ただ、




『無理して起きてきたんだね』




気が抜けたらしくあいさつもそこそこにイスにたおれこんで夢の世界に行ったリボーンくん。


いつからいたかはわかんないけど、バッティング練習が終わんのを待ってたんだとしたらかなりの早起きになる。




このぐらいの子は寝るのが仕事みたいなもんだから、それに逆らって早起きできるこの子はスゴい。








…で、気になるのはさっき言ってたトレーニング。



リボーンくんが起きたら聞いてみるかな








どこの子だ?と聞いてくるおっちゃんに親友のいとこだってこたえ、
ちっさな体を抱きあげうちにもどった。









また面白いやつだったらいいな、なんて思いながら。








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