雨音が聞こえる

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『え゙…なんで京子とハルが倒れてんの?』


「や、弥白!!?」



部活の帰り、ラ・ナミモリーヌってケーキ屋に人だかりができてて
気になったからのぞいてみれば倒れてる京子とハル、そして立ちつくすツナがその中心にいた。





割れたショーウインドウの破片が、3人に近づくあたしの足の下で音をたてる。




見た感じ 元気そーなツナはとりあえず後まわしで、倒れてる京子とハルの様子を見ることにする。











京子もハルもただ寝てるだけみたいだからちょっと安心したけれど
毛布をまとう姿にまさかと思って確認してみれば 2人とも下着以外は何も着てない状態だった。






…あれ、前 同じよーなことなかったっけ







「えっと、これは…その、不可抗力というかなんという『ツナ。二度目、だよね?』………」


そうつぶやいたあたしを見てツナはあわてたよーに言ったけど、しっかり思いだしたあたしがその言葉を笑顔でさえぎったら冷や汗をかいてかたまった。





でも まぁツナのことだからまきこまれたんだと思うけどね〜






京子たちの腕のすぐそばに落ちてるガラスのカケラを靴ですって遠ざける。




『ん〜…』




2人のこのカッコでガラスがそこらにちらばるここに寝っ転がらせんのはあまりよくないと思った。






だから、ツナにくわしいことを聞くよりも



『ツナ、2人をあたしんちにつれてこっか』



2人を安全なとこに運ぶのが先だ。












「運ぶ ってどーやって『っしょっと』…って 姫抱きー!!?」



『ん?うん。2人とも軽いから楽勝楽勝!』




そう言って毛布がはだけないよーに注意しながらハルを持つ。


うわ、軽いなー…



ハルの軽さにちょっと驚く。
本当に運動部なのか聞きたくなるくらいだ。




京子が持てるかツナに聞くと 自信がないからムリだって言った。



『んじゃ、いったんハル運んでくっからツナは京子見ててね〜』


「い、いってらっしゃい…?」



なんとも言えない顔をするツナに首をかしげて あたしはうちまで急いだ。



















服を着せて2人を奥の間に寝かせ、あたしはツナと なんてことない話をしながら部屋でぐてーっとしてる。







「…弥白って力あるね…」



そういえば、とつぶやいたツナは言った。

苦笑いが自然とうかんできたのは、それがよく言われることだったから。



『ハハハ んなことないって
うちの部のマネージャーはみんなこんぐらいはあるはずだよ』


「そ、そうなの?」


『うん』



だからいつもと同じよーにながした。


まあ、ホントは ドリンクカゴ3つ重ねをあたし以外にやる人がいないからどのくらいみんなに力あんのかよくわかんないんだけどね。
(注:他の人がやらないのはできないからです)





遠い目をしてたツナが ふとあたしのむこうの何かを見た。


つられてそっちを見れば、あたしが毎朝お世話になってるめざまし時計があり、示す時間はいつの間にか5時ちかくになっていた。




「あ…なんだかんだで2時間経ってる」


『ホントだ。そろそろ2人も起きるかな?』








階段を降りて部屋をのぞいてみると、ちょうど起きたとこらしく目をこする京子がいた。


そのとなりのハルも気配に気づいたのかうめきはじめたし そろそろ起きるか?




「…ふぁ………?…弥白?に、ツナ君?
なんでわたしの部屋に2人が…?」



寝ぼけて自分の部屋だってかんちがいしてるのか、不思議そうな顔をする京子。(まだ眠そーだ)

キョロキョロとまわりを見て、自分ちじゃないってわかってきたらしく今度は困惑しだした様子。


まあ、あたしたちがいるから ここがどこだかはだいたいわかったみたいだけど。




『ここはあたしんちだよ
えっと、たしか…川に落ちたんだっけ?』


「う うん、そうそう!
なんとか 川からは助けられたんだけど、2人とも気絶しちゃっててさ。
困ってたところに弥白が通りがかって運んでもらったんだ!

それで、京子ちゃん、平気?
なんか体に違和感とかないよね?」


「そっかーわたし川に落ちちゃったんだ〜…
うん 大丈夫だよ。むしろ元気すぎる感じ!」


『それはよかった
服はグチョグチョに汚れてて洗っても落ちなかったから捨てちゃったんだけど 大丈夫だった?』


「うーん…
ちょっと残念だけど仕方ないよね
ありがとう弥白」




京子の心からの笑顔と礼の言葉に いたたまれなくなってきて、あさっての方を向いて乾いた笑いをする。


同じことを感じたらしいツナと目があってお互い苦笑した。






ウソつくのって、苦しい。





ココロの奥のほうがこう…ギュウッてなる感じがする。







けど、そんなことを感じてても笑顔のままでいられる自分がいたのにはちょっとおどろいた。





あたしってもっとウソつくのが苦手なもんだとばかり思ってたのにな〜










実は起きてたハルが寝相だと言ってツナに抱きつくのを笑ってながめながら、そんなことを思った。








あたしが 真っ赤になって助けをもとめるツナに加勢するのはもう少しあとの話。






end.
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