雨音が聞こえる

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『わぁ…』




シャワーのあとの生乾きの毛先をいじりながら見あげた空は ぬけるような秋晴れで。


その清々しさにあたしは自然と笑顔になった。




どの季節も天気も好きだけど、やっぱ元気のでる晴れが一番!



冷たい空気を肌で感じながら歩く。



『よっ……っと』


おいといたカゴをもちあげて用具倉庫にかたづけにいく途中、今日がリボーンくんの誕生日だってことを思いだした。



ちょっと前に パーティーがあるとは教えてもらってたけど、部活が忙しくてプレゼントをさがしにいく余裕がなかった
(これは言いわけになっちゃうけどさ。)




で、そのかわりにお菓子をあげようかとも思ったんだけど リボーンくんが菓子もらってよろこぶのはなぜか想像できなかったからやめとくことに。












そういえば
あたし リボーンくんのことぜんぜん知らないなー






なんとなく思った。







知ってるのはせいぜいツナのいとこで、頭のいい赤ん坊ってことぐらい。



なにが好きか とか聞いてみたことないしなー…









ん、決めた。


これを機にみんなの好きなものとか聞こう!









そう決めた後は、プレゼントをなににするかってことに頭をシフトした。


寿司はきまりとして、リボーンくんへのプレゼントをどうしようか…


だれかとかぶるものはおくりたくないなー





ハルはぬいもの系を作ってるらしい。
まあそれ以前にあたしは裁縫が苦手だからそっち系はムリだけどね。



ランボは ちょっと前にのりを借りにきたから絵かなにか作ってるのかな。


ビアンキさんはパフォーマンスをやるんだとか。




獄寺は 「おい!!」



突然のどなり声に背筋がピシッとのびた。




『うあぉっ!
……あ、獄寺!いいとこに来た。
今日のパーティー、獄寺はなにやんの?』




実はまだ彼には何やるかを聞いてなかったんだ。







舌うちした獄寺はいつも通り機嫌悪そーな顔で言った。


「そのことで話があんだよ」
















『…あ〜っと、つまりあたしが獄寺のやる手品を手伝うってこと?』


「そーだ!やっと理解したか野球バカが!!」



グーにした手をふりかぶる獄寺をいつものよーになだめる。




獄寺にわたされた紙には、
剣の刺さった箱に入ってる男の人がさけんでる様子がデフォルメされた絵が書かれていた。
"これであなたも今日からマジシャンの仲間入り!
今なら本物の剣もタダでおつけします!"
っていううたい文句もいっしょ。


人の入った箱に剣を刺してくよくみるけど結構本格的な手品だ。





『まーまー。
けど獄寺。ケッコー本格的なやつやるんだね』


「ったりめーだ!
リボーンさんの誕生日パーティにちゃちな出し物なんてやってられねーだろーが!」



誕生日はだれのものでも全力で祝わないとだしねー
そう思ったあたしはうなずいた。











『じゃ、
あたしは箱に剣を刺してけばいいんだね』



獄寺の動きがとまる。




あれ? と首をかしげていると、



「んなわけあるかあぁ!!!」




いきなり獄寺のカミナリが落ちてきた。




ビクッと肩をすくめたあたしにたたみかけるように獄寺は言う。




「よく聞いとけよ!
体格的に考えておめーが入んのが一番効率がいいからわざわざ来たんだよ!!
じゃなきゃだれが頼むか!」




『ハハ、ごめんごめん獄寺
じゃあタネ明かししてくんないかな?そーしないとホントに刺さるからねー』



剣の刺さった自分を想像……できなかった。

今まで剣どころか なんか刺さったなんてこと ないからな〜。









「知らねー」


『そっか 知らないのかーー…って、…え?』



思わず耳をうたがう。


知らないって、それ ヤバいんじゃ





「今日のパーティーの最中に届くよう手配してあっからセットが届きしだい手品をやる。
練習無しだがなんとかなんだろ。
箱に剣を刺すだけの単純な手品だしな」





『…………ゴメン獄寺
やっぱムリだわ』


「は!?」



手品は単純なやつほどあぶないし 難しいんだって昔だれかに教えてもらったことがある。

ぶっつけ本番で手品ができるよーな器用さをあたしは持ってないし、できたとしても…もし失敗したら。

あたしはまだ死にたくないよ。




「おい!さっき手伝うって言っただろーが!!あぁ゙!?ここに来て今さら怖気づいたのかよ!
いくらオメーが野球バカでも、こんな単純な手品の1つはできんだろ!!」



カチンときた。
あたしだってこんだけ怒鳴られっぱなしだと怒る。



『そりゃ怖気づくに決まってんでしょーが
ホンモノの剣が刺されるのに練習1回もしないでぶっつけ本番とか、あたしホントに死ぬから。
それに野球と手品はぜんぜんちがうものじゃんか!』


「練習なくてもカリキュラムがあるんだからやり方はわかるようになってるっつーの!
セットに何の資料もないなんてこと、あってたまるか!!」


『でもあたしはムリ』


「んだと!!?」




獄寺に胸ぐらをつかまれてお互いににらみ合った時だ




視界のはしになにかとらえたのか、まっすぐこっちを見てた獄寺の瞳が横にずらされる。



そして



「!」



見開かれた目。


さっきまで谷のよーにあった眉間のシワがその一瞬でなくなったのを見て、だれが来たのかがなんとなくわかった。



見てみればやっぱり



「10代目!」


『ツナ!』



ボーゼンと立ってるツナがいた。




「ど…どーしたの?」




誕生日パーティの出しもので もめてた、って言おうとしたら獄寺が目で 言うなっ!とおくってきた。

たぶん彼のことだからネタばらししたらツナが楽しめないって考えてるんだろう。


たしかに 何をやるかわかってる手品ほどおもしろくないものはない。


あたしは口をつぐんだ。



「い…いや…あの…」


『別に何でもないよ…』



ばらすわけにもいかず歯切れの悪い返事になり、ますますツナは怪訝な表情になってく。




「………」

「………」

『……ハハ』



沈黙とツナの目が痛い。






『よっしゃ、部活の片付けしないとねー』



なんともいえない沈黙にたえきれなくなったあたしはつとめて明るい口調をつくって言った。




「さー授業の準備準備!」



気まずいのは獄寺も同じだったみたいで、かわいた声でそう言って昇降口に歩いていく。






その後もツナの疑問いっぱいの視線をビシバシ感じていたけど ふりかえらないようにしながら、しまう必要のない箱を用具倉庫にはこんだ。













あれ、なんか忘れてる気が…?






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