雨音が聞こえる

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「で、昼飯の時間になったっていって連れてこられて寿司を食べてたら、いきなりみんな逃げだしてオレだけがとり残されたんだ……」



『ハハハハ!!
みごとにだまされちゃったわけか』



今回は早く気づいたもん勝ちの遊びだったんだね〜


あたしも昔にそんな感じの遊びやったな〜っ
ウソつく人がいて、そのウソに一番はやく気づいた人がお菓子をもらえるってやつ。


あたしは全戦全敗だったっけ




『リボーンくん頭いいけどまだちっちゃいしさ、だまされたら立つ瀬ないよ〜』


「そんなこといったって…」


あいつらのだまし方がひどいんだよ…




涙目でつぶやくツナの頭をぽんぽんと軽くなでてやっていると、オヤジが茶をはこんできた。

盆からとった湯のみを机の上においていく。熱いから気をつけて って声をかけるとすぐに手をひっこめたツナに軽く笑った。





「そーかヤシロのマブダチか〜」



そろそろくるかな




「だったら話は変わらぁな」

「!?」




「さっきの分はおっちゃんがおごってやるよ」



「本当ですか!?ウニやトロまで!?」



「おう!ヤシロが世話になってるみてーだからな!」



「ありがとうございます!」


『サンキュー』




オヤジは昔っから、あたしの友達が来ると寿司をタダでふるまうんだよね〜

たまにやりすぎて赤字だー!って叫んでるけれど。





『よかったじゃん、ツナ』


「ホントよかったよ〜
さすが弥白のお父さん!いい人だね!」



『ハハハ、そっかな?』



あたしから見ればみんなでワイワイすんのが好きなだけに見えたり…これはオヤジに秘密だけど。






ツナとそうして話してたら




「……あのよ、盛り上がってっとこすまねーんだが」



『「?」』





申し訳なさそうにオヤジが指さした先では









「あの分は払ってくれよ」


『うわ』

「んな゙ーーーー!!!」



切って置いといたネタをリボーンくん、ランボ、ビアンキさんが食べつくしていた。





「ごち」


「コラーーー!!!」



走り去る3人に叫ぶツナ。
オヤジは叱るタイミングを逃したみたいでばつが悪そうな顔をしてる。





あたしはあざやかなその逃げ方に、なんども練習したんだな〜とちょっと感心してた。
(↑…そっち?)










「クピャ!!

……ガ・マ・ン…」



『よしよし。えらいぞよくガマンしたね〜…っと』



ビアンキさんのスピードに追いつけなかったランボがころんだのを起こしてやった。


ツナの、ガマンって言いたいのはこっちだよ…
って言葉をバックにランボにできるだけやさしく話しかける。



『せめて自分の分は払ってった方がいいんじゃないかな?
食い逃げはやっちゃいけないことなんだよ』



うなずいたランボはモゾモゾとさがしはじめ、いきなり冷や汗をかきはじめる。



『ランボ どーしたの?』


「………まさか」





「ん」


彼の手の上にあったのは



「石ーーーーー!!!?」



その辺に落ちてそーな、ちょっときれいな色をした石だった。



ショックでかたまるツナの肩をたたく。




『まーー子どもなんだし仕方ないって、ね?
ランボの分はあたしがなんとかするよ』



ツナばっかに押しつけんのはあれだし。








『…にしても、値のはるものばっか食べてったねー』


ホタテにエビに大トロ中トロ…あとカニとウニか〜
全部今朝仕入れたばかりのもの。

うちは江戸前寿司だしこれは結構ヤバいかも…








「こりゃ7万にはなるぞ」


「なっ7万!!!」



うわ、中学生のこづかいで払える額じゃないよ
ランボの分引いても6万近くあるのか…



「ど…どーすんだよー

そんな大金支払えっこないよーー!!!」




「働いて返せばいいだろ?」



? リボーンくん?


ふりかえった先には、新しくきたお客―リボーンくんとよく似てる猟師のおじさんがいた



「働かざるもの食うべからず
オレも働いてこれをゲットした」



このおじさんが捕ったらしい鳥をなんとなくうけとっちゃったけど…これ、どーしよーか…ι

ん?

あ、よかった。ただ気絶してるだけっぽい

後で逃がすか



「リボーンおまえ〜〜!!!」


あ、ツナまちがえてる。この人リボーンくんじゃないぞー。
と心の中でつっこむ。ツナがまちがえる気持ちもわかるけどね。



「うんお客さん。そいつぁいいアイデアだ

金がなけりゃ体で払ってもらうしかねーもんなぁ」


「ひっ、ちょっ、あの!」



『まーまーオヤジ、ツナの判断を待とうよ』





「まーー確かにいきなりだしな〜んじゃ、決まったら言ってくれ」


そう言ってオヤジはたべのこしが散らばるカウンター席を片付けだした。






「ふざけんな!!」



ん?



「だいたい7万なんて1日2日働いて返せる金額じゃないじゃないかーー」


『まーまー
あたしも手伝うから』


「弥白」



リボーンくん似のお客さん(←リボーン本人です)につっかかるツナをとめる。



『とりあえず、いくら似ててもお客につっかかるなって、ね』







返す言葉がないのか、ツナは だぁ〜っと大きなため息をついた。






「もう こうなったらバイトするしかないか……」



『心配ないって。
オヤジ〜!ツナ バイトするってさ!』





「あいよー!!ツナ君 ちょっと待ってな!」




はいよ、とわたされたのは腰エプロン。



「汚れたらうちの人が大変だろ?」


「は はい、ありがとうございます!」




『巻き方わかる?』



「たぶん……えっと、後ろで結べば…って残りのヒモ長くない!?」



『腰エプロンは後ろで交差したあと、前にもってって、それから後ろで結べばちょうどよくなるよ』



「そっか……こんな形のエプロン初めてだからわからなかったよ」




誰でもそーだからだいじょーぶ。って言って笑うと、ずっとしずんでたツナの表情がようやく少しほぐれた。




「それで、オレは何をすればいいんですか…?」



「そーだなー…
よし、じゃあ中で皿洗いを頼む」



「わかりました…」



『部屋に荷物置いたら行くからだいじょーぶだよ』



「うん」




のれんをくぐる背中をみおくって、あたしは床に置いといた荷物を持ちあげた。


「…にしても、あのチビ達ネタを見る目があるな」


『? どーゆーこと?』




手招き。


カウンターをまわってネタを見てみると、
食べられたのは高いものの他に、仕入れたばっかの しかも旬のものが食べられてるのがわかった。




『あたしでもすぐに旬かどーか分かんないものまで食べられてる…』


「だろ?
食い逃げなんてせずに普通に来てたんなら最高の客だぜ
この騒ぎが終わったらいっぺん呼んでみてーなー」



『ん。あの子たちツナんちに住んでるから いつでも呼べるよ』



「そーかそーか!
じゃあ今度言っといてくれよー」



『りょーかーい』






後ろ手にオヤジに手をふり、階段をあがる。



部屋にちゃちゃっと荷物を放りこみ、ツナのいる台所へ向かった。





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