雨音が聞こえる

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『ただいまー

? どしたのオヤジ?』




マネージャー激務を終えて家にかえってきたあたしの前には





「食い逃げだよ」


「あ、なっ」




鬼の形相のオヤジと、

食い逃げ犯 もとい





『ツナじゃん』

「弥白!」


ツナがいた




「ん?ヤシロ…知り合いか?」


「こ…ここって弥白んちの寿司屋だったの!?」



驚くツナにあれ?と首をかしげる。




『? うちがどの店だか言ってなかったけ?』



「聞かされてないよ!
たしか、家が寿司屋だって聞いた瞬間チャイムが鳴って…」




そう言われればそーだった気もするけど、あいまいで出てこない



こーゆーときは考えてもムダだ。




『ま いっか。ようこそ竹寿司へ』



もっとちゃんと来たかった…とつぶやくツナの背を軽くたたく



『で、食い逃げって?』



オヤジにきいてみる。



「いやー
さっきっまでこの、ツナ君、だっけか?と一緒に赤ん坊2人と外人のねーちゃんが来てたんだが、ちょいと目を離した隙にいなくなっちまっててなーっ

一人逃げ遅れてたこの子を捕まえたわけだ。

家に電話かけてもだれも出ねーし、ケーサツに連絡すっかどーか迷ってるとこなんだが…」


「それをどーにか!!
オレはただリボーンたちにだまされただけなんです!!!」



『なるほどねー』



これってやっぱいつものマフィアごっこなんだろーな〜





『で、ツナはどーしてだまされたの?』




「聞いてくれるの!?」




『もちろん』





親友の話を聞かないままでケーサツに引き渡すほどあたしは冷たい人じゃないよ。



「えっと…」







今日の朝のこと



「ごめんねツッ君〜
今日母さん昔のお友達と遊びに行くからご飯準備できないの」


「えぇー!?」



驚くツナと、知っていたのか黙々と食べ続けるそれ以外の面々。



「でもビアンキちゃんがどうにかしてくれるそうだから心配しなくてもいいわよ
ホントよかったわよね〜
こんなに頼りになる子がいて」



その言葉にうっすら頬を染めるビアンキはいつも通り。むしろ頼りにされて張り切っているようにも見える。



………ムリだ。



いつも通りのビアンキじゃ、絶対にポイズンクッキングが完成する。





「ダメだよ母さん!!ビアンキじゃみんなで共倒れになるって!!!」



ポイズンクッキングとは、ビアンキが料理をすると必ずできる、失敗作を通り越し 一周回ってある意味(毒として)成功した料理ともいえない物体のことだ。




彼女が料理を作ると、必ずそれが完成する。

要は、普通の料理が作れないというわけで。


身に染みてポイズンクッキングのおそろしさを知るツナは目一杯否定したが、




「あ、母さんそろそろ行かなくっちゃ
じゃあビアンキちゃん、後は頼んだわよ〜」

「了解よ、ママン」

「(無視かよ!!?)」




弥白の上をいくかもしれない天然気質の母親と、作為的なシカトの前には通じなかった。


軽い音(ツナにとっては死刑宣告の音)をたてて、玄関のドアは閉ざされた。








「(いいのかよ、リボーン!!このままだと全員ポイズンクッキングのえじきだぞ!)」


今この場にいる一番"まとも"な人物、リボーンに声をかけた。

彼もポイズンクッキングを食べたくないはずで、なのに何も言ってこないのはおかしい。

ビアンキを逆なでしないように小さな声で言うと。




「別に大丈夫だぞ
今日の昼は全員で外食するつもりだからな」


「…え 全員で外食?…って、オレも だよな?」


「そーだぞ
最近ツナがんばってるからな」


「リボーン…」




かえってきた意外な答え。経験上、こういうときはだいたい置いていかれひどい目に合うのだが、どうやら目の前のスパルタ家庭教師にも情というものはあったらしい。






そう思って油断した自分が悪い。





「どこ?ファミレス?」



外食はひさしぶりだったから少しうかれていたのかもしれない。





忘れていたんだ







「寿司屋だぞ」




このスパルタ教師が優しくするときは、絶対に何かたくらんでいるときだということを。






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