雨音が聞こえる
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ワアアァア!!
みんなの歓声をバックに、あたしはゴールテープを切った
「よくやった山本!」
「さすが!」
「弥白すごい!」
息をととのえてると、クラスメイトの人たちに囲まれ、一斉にほめられる。
ちょっと気恥ずかしくて頭をかきつつそれに応えていると、ふと、前みたいな孤独を感じてないことに気がついた
野球をなくしたらって気持ちはまだあるけれど。
でも前よりずいぶんマシになったものだなと自分の変化に驚く。
これはやっぱ彼のおかげだな〜
スプリング競争をかなりイヤそーにやってるツナをチラッと見てから、
「どうしたの弥白?行こう?」
「あー暑い暑い。早く日陰に行きたいわ…」
『ごめんごめん
じゃ、行こっか』
京子と花の元に歩いた
―お昼休み―
オヤジが朝からつくっていたちらし寿司を食べ、エネルギー充填はバッチリ
まだまだ時間は余ってるから、あたしは散歩をすることにした
『〜♪』
気のむくままに歩いていると、人がたくさん倒れてるところについた
ちょっと危険な気もしたけど、好奇心の方が勝ったため、
『よっと…ってすみません!』
踏まないようにしながら、でもときどき踏んでしまいながらもこの状況の中心に向かうことにした
『あ、ツナじゃん』
「え、弥白!?」
着いたのはツナんちのビニールシート
どー考えてもここが中心だよなーと確認しつつ近づく
(ついでにツナのお母さん、外人っぽい女の人、ハルなどなどにあいさつしといた)
「どうしてこんなところ(惨状)に来たの!?」
『いや〜気になったものは確認してみたい質なんだよね〜
お、からあげおいしそう』
「(興味本位で来れるような状況じゃねー!!)
………一個あげるよ」
『サンキュ』
うちとはまた違う味のからあげだけど、見た目どおりおいしい。
ツナの母さん料理上手いな〜。
食べたのは唐揚げだけだけど、お弁当箱に詰められた食べ物は全部おいしそう
あたしも料理の練習ちゃんとしないとな〜
料理店の娘として負けてらんない
「えっと…弥白…?(バックに炎が見えるのは気のせいだよな!?)」
《おまたせしました
棒倒しの審議の結果が出ました》
『ん?』
「うわ、忘れてた!!」
そーいえば、ツナがB・C組の総大将を襲撃させたらしいって話がながれてて。
あたしはその情報を信じらんないと思うけど、彼をダメだって思ってる人たちからすればありえないことじゃないらしく、
犯人のツナをどーするかについて会議が開かれていた。
その結果が
《各代表の話し合いにより今年の棒倒しは
A組対B・C連合チームとします!》
「なっ 2対1!?」
「よっしゃ!B・C連合!!」
A組からは驚きの声
連合チームからは歓声がそれぞれあがった
「あのA組総大将をぶち落とせー!!」
オオオオオォ!
《男子は全員棒倒しの準備をしてください》
やる気に満ちた顔で準備をはじめた連合チームに、早くも身の危険を感じたらしいツナが頭をかかえて叫んでる
「そんなーっ!
オレ 生きて帰れるのー!!?」
そんな彼をフォローしながら、あたしはこの先のことに考えをめぐらせていた
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