雨音が聞こえる

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『〜〜〜♪』



バットを片手に、鼻歌を歌いながら練習場への道を歩く。










お医者さんが言うには、もう素振りはしても大丈夫。

(まだボールを打つのはダメだし、包帯は巻きっぱなしだけどさ)












そのことをオヤジに伝え、なにか言われる前にバットを持って家を出てきた。






今日もいつも通りに暑いけど、青空はいつも以上に清々しく見える。




空き地とかも一面緑でおおわれていて、夏なんだな〜と再確認。

















いつもだったら目に入らない風景が妙に見えるあたり、
今日はすごくテンションが高いのが自分でもわかる。






















『……ん?』




今、目の前の十字路を左から右に獄寺が走っていった。






獄寺の今にも倒れそうなほどよたよたした走り方と、真っ青な顔が印象に残った。








『お腹おさえてたし…食中毒?』







足を止めずに進み続け
さっき獄寺がとおっていった十字路の真ん中に着いたとき








「ハァッ…ハァッ……弥白?」





『あれ、ツナじゃん』





獄寺と同じ左の道からツナが走ってきた。






「ハァ……獄寺君見てない?」






『獄寺?獄寺だったらあっち行ったけど…
鬼ごっこかなんかしてんの?』




さっき獄寺が走ってった道を指さす。










よくよく考えたらあっちに病院無いしな〜









「ううん。なんか急に獄寺君走ってっちゃったから追っかけてるだけだよ。」






獄寺が逃げるって…何があったんだろ?






『そっか。見つかるといいね

んじゃ、がんばってねツナ』






「うん。呼び止めてゴメン
それじゃ!」





そう言うと同時にツナは獄寺が通ってった道を走っていった。



















ツナを見おくった後は特に何事もなく練習場についた。






『練習練習♪』




ウキウキした足どりで練習場に入り、素振りをはじめる。











(その素振りのスピードが一般男子のそれの速度を軽く越えているのはご愛嬌)
















『……998…999…1000!



よっし!終わった!』






とりあえずは1000本×2セットで終わらせる。







ケガする前と比べると、
やっぱり今のほうが終わった後の疲労感が大きい。










一瞬ヤバい、と思ったけど










ま、もしかしたら前はやりすぎて疲れ感じてるヒマなかったのかもしんないね








そう思うことで焦った心をおちつかせた。










焦りは禁物!焦ったってキズはすぐ治んないし。



















帰り道。






あたしは自己反省しながら帰るのが日課だ。










こうなったのは確か…










―一日の時間は決まってるからスキ無く使え―




そうだ。これは昔のコーチに教えられたことだったっけ





野球はぜんぜんできなかったけど、そのかわりにいろいろタメになる言葉をあの人は残した。











今も心に残ってる言葉が一つ、ある。


















―友のための労力を惜しむな。


その時どんなに辛くてもその友に涙を見せるな。



自分の助けが必要だということは、
すなわち相手も辛い場面にいるということだ。


もしそいつがそんな場面にいない時は、おもいきり泣いて困らせてやれ


…ひどい?それはそいつの自業自得だ。

助けが必要ないのに甘えたそいつが悪い―












あたしは今までずっとこれを実行してきた。







どう考えても楽したくて頼んできた人の頼みは
泣くまではしないもののすっぱり断ってきた。






逆に、もうおいつめられた人の頼みは内容が大変だったとしても笑ってこなした。























これから先もこれはずっと変わらない。














自分でもガンコな性格だと自覚してる。




だから、変わることは絶対にないと言い切れる。















…あたしはまちがいなくこの人の血を受け継いでるな
と思いながらのれんをくぐり、口を開いた。




















『ただいま』











end.
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