雨音が聞こえる

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『う〜ん…いい天気!』






今日の天気は快晴。




ありがちだけど、すいこまれそうなくらいに真っ青な空が気持ちいい。















あたしは今、
トレーニングしようとするたびに止めてくるオヤジの目をかいくぐって
ランニングをしてる最中。








心配してくれるのはうれしいけど
あたしは運動したいんだ











そう思ったあとは、しばらくなにも考えずに走り続けた




変なこと考えてペースを乱したくないからね















見馴れた町を走り続けていたら、途中で息があがってきた










このまま走るかどうか迷っていると、
この先に公園があったのを思いだす







そこで、公園で一回休憩をとることにした
















『ふー、やっぱなまってるなぁ…』



ベンチに座って言葉をもらす






少ししか走ってないのに、激しく練習をした後みたいに疲れた




とりもどすのは大変そう






ちょっと前までのあたしなら、焦って走りまわってるかもなー







だけど、今はツナの言葉が効いてるみたいで。

これも死ぬ気でがんばればなんとかなると思えるから不思議だ















『あたしも変わったな〜』



あたしが変わるきっかけになった彼を思いだして小さく笑う



















さて、公園に入ったときから気になってたんだけど

モジャモジャな髪をした男の子が
「よーいドン!」
と叫んで空砲を撃ってるんだ。
(注:本物の銃です)




ただ、撃ったはいいもののそれで走ってくれる人がいないみたいで。



少し寂しそうに地面を見つめて
また撃つっていうのをずっとくりかえしてる







運動会の練習なら走る人もいないとね








そう思ったあたしは、
また寂しそうにしてる男の子に近づいて声をかけた。





『ねぇ、寂しいならあたしが走ろっか?』





男の子はピクッと動きを止めると、こっちを見て言った






「ランボさんは
誰も走ってくれないからって寂しいなんて思ってないもんね!

でもランボさん優しいから特別にお前を走らせてやるもんね!」







寂しがってたのを隠そうとするのがバレバレで。




すごくほほえましいと思った









『ハハハ、そっか

じゃー寂しがってないランボさんによーいドン!ってしてもらおっか』





「当然だもんね!」










それから空砲の弾が無くなるまで、ずっと「よーいドン!ごっこ」をしていた。






弾がなくなったのは、
ちょうど空が赤くなってきた頃だった




物足りなそうな顔をして
引き金をカチャカチャならしてるランボに言う。





『ランボ、そろそろ帰ろっか』




そう言うと、ランボはフルフルと首を振った




「ランボさんまだ遊べるもんね!これだってまだ使えるんだもんね!」



と言って空砲を見せてくる



『うーんでもさ ランボも疲れたでしょ?
ずっと叫んでたからか声かすれてるし』




「大丈夫…だもんね」








そんな感じで押し問答が続いたけど、結局ランボが条件付きで折れた








半泣きなのはかわいそうだけど、これは仕方ない。










『じゃ、ランボ。
気をつけて帰るんだよ?』



「……ん」









返事をして公園の出口に歩いていくランボが急に振り返って言った。






「ランボさんお前の名前知らないから教えてほしいもんね!」






ちょっとびっくりしたけど、笑って言葉をかえす。





『あたしは山本弥白!
また会おうね!』




「絶対だもんね!」





そう言って、ランボは小走りで公園を出ていった。












さぁ、オヤジに怒られに帰りますか。




確実に家にいないことに気づいただろうオヤジの
怒りの形相を思い浮かべ、あたしは肩をすくめた。













end.
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