雨音が聞こえる

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―早朝―




並盛町にあるバッティングセンターから、景気よくボールが打たれる音が聞こえてくる。





たとえ打っている本人が景気がいいと思っていなくとも。
















『くっ……』



彼女、山本弥白は焦っていた。



タイミングも合わせ、渾身の力を込めて打ったはずのボールが、
ホームランと書かれた板を遥かにずれたファールゾーンへと飛んでいったからだ。






まだ早い時間だというのに彼女の額には汗が滲み、
顔や首筋に張りついてくる髪を鬱陶しそうにはらう。





そして持っているバットを構え直すと、飛んでくるボールに意識を集中した。














それから何十本も打ったものの、ホームランの板付近に飛んだのは十何本。


板に当たったのは片手で数えられるだけの数だった。



















こうして、彼女の一日は始まった。









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